無人自動運転の鉄道路線「金沢シーサイドライン」で逆走事故が起きた。進行方向が正しく伝わらず、本来とは反対の方向に進行したのだ。詳細な原因は調査中だが、現時点で分かっている情報から判断する限り、安全を重視したフェイルセーフ設計ではなかったと言わざるを得ない。

 2019年6月1日、横浜市内の新杉田駅と金沢八景駅を結ぶ金沢シーサイドライン(以下、シーサイドライン)で逆走事故が起きた(図1)。同日20時15分ごろ、始発の新杉田駅から出発しようとした車両(途中の並木中央駅行き、5両編成)が、本来とは反対の方向に進行。線路終端の車止めに衝突し、停止した。この事故で乗客16人が負傷した。

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図1 逆走したシーサイドラインの車両
事故発生翌日の2019年6月2日に撮影された写真。改札側から見た衝突車両(a)。線路終端の車止めに衝突した(b)。(出所:横浜シーサイドライン、国土交通省)

 シーサイドラインは、鉄道の種類としては「自動案内軌条式旅客輸送システム(AGT:Automated Guideway Transit)」に分類される。専用軌道上をゴムタイヤで走行するもので、「新交通システム」とも呼ばれる。事業者は、横浜市や京浜急行電鉄などが出資する横浜シーサイドライン(本社横浜市)である。1989年の開業からしばらくは運転士による手動運転(ワンマン運転)だったが、1994年に全面的に無人自動運転に移行した。

 今回の事故を受けて、国土交通省の外局である運輸安全委員会は直ちに調査を開始。同月14日に、それまでに明らかになった情報を同省鉄道局に報告した*1

*1 運輸安全委員会は引き続き詳細な原因を調査している。

本来の進行方向が伝わらず

 逆走の直接的な原因は、動力用モーターの制御装置に進行方向を伝達する電線が切れていたことだ。無人自動運転のシーサイドラインでは、進行方向を駅から車両に自動で伝える。具体的には、各駅に設置されている「駅自動列車運転(ATO:Automatic Train Operation)地上装置」から車両側の「駅ATO車上装置」に伝え、さらに「継電器盤」を介してモーターを制御する「可変電圧周波数(VVVF:Variable Voltage Variable Frequency)制御装置」に伝える仕組みとなっている(図2)。駅ATO車上装置は金沢八景駅側から数えて2両目、継電器盤は1、5両目の運転台、VVVF制御装置は1、3、5両目に設置されている。

図2 進行方向を伝える仕組み
進行方向が下り(新杉田駅→金沢八景駅)の場合。駅に設置されている駅ATO地上装置の情報を受けた駅ATO車上装置(2両目に設置)が194線に信号を印加。それによって継電器盤(1、5両目の運転台に設置)を介してF線も印加されるはずだったが、事故発生時はF線が切れており、VVVF制御装置(1、3、5両目に設置)に正しい進行方向が伝わらなかった。(運輸安全委員会の資料を基に日経ものづくりが作成)
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 駅ATO車上装置と継電器盤をつなぐ電線は「194線」「195線」、継電器盤とVVVF制御装置をつなぐ電線は「F線」「R線」と、それぞれ2系統ある。進行方向が下り(新杉田駅→金沢八景駅)の場合、まず194線に電圧が加わり、継電器盤を経由してF線にも印加される。逆に上り(金沢八景駅→新杉田駅)では、195線とR線が印加される。

 逆走した車両の本来の進行方向は下りなので、駅ATO地上装置の指令を受けた駅ATO車上装置によって194線が印加された。ところが、1両目の継電器盤とVVVF制御装置の間でF線が切れており、F線には印加されなかった(図3)。従って、全てのVVVF制御装置に本来の進行方向(下り)が正しく伝わらないまま、モーターを駆動する指令が入ってしまった。

図3 切れていたF線
束ねられていたケーブルから断線したF線だけが外れていた。車両の骨格部材との摩擦で断線したとみられている。(出所:運輸安全委員会)
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 F線もR線も印加されていない場合、VVVF制御装置における進行方向の値は「以前の状態を維持」する仕様だった(表1)。直前まで新杉田駅に向かって事故車両の「以前の状態」は、「上り」である。そのため、本来の進行方向が下りであるにもかかわらず、上り方向に逆走した。F線の断線は車両が新杉田駅に向かって走行する途中で発生したとみられる。

表1 逆走した車両のVVVF制御装置の仕様
シーサイドラインのVVVF制御装置は、F線とR線の両方が印加されていない場合、「以前の状態を維持」する仕様だった。逆走した車両は下り電車だったが、直前まで上りで走行していた。F線の断線によってF線が印加されなかったため、「以前の状態」である上りの情報をVVVF制御装置が保持しており、結果的に逆走した。(運輸安全委員会の資料を基に日経ものづくりが作成)
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