2019年3月10日、アディスアベバ発ナイロビ行きのエチオピア航空ET302便(ボーイング737MAX-8)が墜落した。2018年にも、インドネシアで同国のライオンエアが運航する同型機の墜落事故が起きている。2件の墜落事故を受けて、「737MAX」の全世界での運航停止・納入中断という事態に発展した。

 2件の事故は経緯がよく似ている。「ボーイング(Boeing)737」旅客機の最新シリーズ「737MAX」で導入されたMCAS(Maneuvering Characteristics Augmentation System、操縦性補正システム)が事故原因に関係するのでは、と1件目の墜落事故の直後から取り沙汰されていた()。

表 ボーイング737MAXの2件の墜落事故と前後の出来事
AoAセンサーに関する情報は、1件目の事故のあと、2018年11月には出ていた。(日経ものづくりが作成)
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 737MAXは、胴体長の違いから「737MAX-7」「同-8」「同-9」の3モデルがある。従来の「NG(ネクストジェネレーション)シリーズ(737-600、同-700、同-800、同-900)」と比較したときの最大の差異は、燃費性能を改善した新エンジン、米CFMインターナショナル製「LEAP-1B」の搭載にある。

 LEAP-1Bは従来のエンジンよりも直径が大きいため、主翼に取り付けたエンジンと地面の間隔を十分に確保するべく、エンジン取り付け位置を上方・前方に移動させた(図1)。その結果、空力的な理由により、飛行中に機首が上がりやすい傾向が強まった。

図1 エンジン搭載位置の変化
737MAXは従来の737に比べて、大径の新型エンジンを上方かつ前方に搭載している。空力的に機首上げ傾向が強まったとされる。(日経ものづくりが作成)
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 機種によって程度の差はあるが、飛行機は機首を上げすぎると主翼が揚力を発生できなくなる、失速(ストール)という現象が発生する。オモリを付けずに紙飛行機を作って飛ばすと、機首がどんどん持ち上がって、最後は飛べなくなって落下するが、それを思い浮かべていただければよい。

 人為的な操縦操作による機首上げは、パイロットが注意すれば防げる。しかし、機体がもともと機首上げの傾向を有しているのでは具合が悪い。そこで737MAXでは、新装備としてMCASを取り入れた。

 これは、過剰な機首上げ操作を自動的に抑制して失速を防ぐためのシステムである。機首の左右に取り付けられた迎え角(AoA : Angle of Attack)センサーが機体周りの気流の向きから迎え角(進行方向に対する機首上げの角度)を検出(図2)。機首上げが生じて迎え角が過大になったと判断したときに、自動的に機首を下げる方向に調整する仕組みだ。

図2 AoA(Angle of Attack)センサー
気流の向きと機体の向きの差を検出する。機首左右に1つずつ装備する。(出所:米Boeing)
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 その機首下げを実現する手段は、水平尾翼の取り付け角変更である。737MAXに限らず他の機体でも、水平尾翼の取り付け角を変えられるようにしている機体は少なくない。もちろん、水平尾翼の後縁部に付いている昇降舵を操作すれば機首の上げ下げが可能だが、それでは飛行中はずっと、パイロットが補正のため昇降舵を操作し続けなければならない。そこで、微妙な釣り合い(トリム)調整に際しては、水平尾翼(水平安定板)の取り付け角そのものを変えてしまう。水平尾翼の取り付け角を前上がりにすれば、尾部を押し上げる力が発生して、機首が下がる。

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