台車枠に長さ140mmもの亀裂が入って新幹線初の重大インシデントとなった2017年12月のJR西日本(西日本旅客鉄道)の事故。日本が安心・安全を誇ってきた高速鉄道で起こった事故は世間を驚かせた。そこにはメーカーのずさんな製造管理、JR西日本のマネジメントの欠如という大きな課題が潜んでいた。

 2017年12月11日、「のぞみ34号」(博多発・東京行、N700系16両編成)の台車枠の一部(側バリ)に、下から上に向かって長さ140mmもの亀裂が入っているのが発見され、東海道新幹線名古屋駅で運転を取りやめるという重大インシデントが発生した(図1)。側バリは、板厚8mmの中空箱形構造で、上面は残っているものの、あと30mmで破断に至るところだった。もし高速走行中に破断に至れば、脱線という大事故になる可能性もあった。

図1 のぞみ34号の台車枠で見つかった亀裂
高さ170mm、幅160mmの側バリと呼ぶ部材に下から上に向かって長さ140mmの亀裂が入っていた。(出所:国土交通省)
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 この事態を重く見た国土交通省・運輸安全委員会(以下、調査委員会)は、重大インシデントに認定して事故調査を続け、調査報告書を2019年3月末に公開した1)。調査委員会による経過報告2)やメーカーである川崎重工業による報告3)などで既に明らかになっている事実も多いものの、川崎重工業での台車製造のずさんさ、JR西日本の危機管理の甘さなどが、あらためて浮き彫りとなった。報告書を基に原因と対策について解説する。

発車直後から異臭や異音が発生していた

 事故を簡単に振り返る。台車枠に亀裂が入ったのは、2017年12月11日13時33分に博多駅を出発したのぞみ34号。実は、最初の停車駅(小倉駅)に着くまでに車掌が甲高い音を聞いた他、同駅発車時には車掌やパーサーが焦げたような臭いを感じるなど、出発直後から異変続きだった。車掌は異臭がする旨を地上の指令員に報告。指令員は、広島駅到着直前に岡山支所の車両保守担当員(以下、保守担当員)の乗車を手配した*1

*1 福山駅から岡山駅への途上でも、複数の車掌やパーサーが焦げたような臭い、甲高い音などを感じた。乗客からも13号車で臭いとモヤがある旨の申告があり、確認に向かった車掌は、13号車の客室全体がかすんでいて焦げたような臭いがしたと供述している。

 岡山駅から乗り込んだ保守担当員は「うなり音」を聞き、新神戸駅で車体とホームの間を懐中電灯で照らして目視確認した。しかし異常は認められず、そのまま新大阪駅まで運行を続けた。新大阪駅でJR西日本の車掌らは、JR東海(東海旅客鉄道)に運行を引き継いだ。その際、異臭や保守担当員の点検があったものの走行に支障はなく、運転継続できると伝えた。

 ところが、京都駅付近にて再び異臭を認めたJR東海が、名古屋駅で車両床下を点検。13号車の台車で歯車箱に油脂の付着を認め、走行不能と判断して運転を取りやめた。さらに同日の夜、重要な構造部材である側バリに大きな亀裂が見つかったのである。

 重大インシデントを引き起こしてしまった要因は大きく2つある。1つは、側バリに亀裂が発生したという事実。定期的な保守点検では発見できなかったことから、急激に亀裂が広がったと考えられる。

 2つ目は走行中に早くから異臭や異音などを認めながら、なぜ運行停止の判断を下せなかったか、である。

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