「ドーン」。2017年12月1日8時25分ごろ、荒川化学工業の富士工場(静岡県富士市)で爆発・火災事故が発生した。爆発の大きさは10kmほど離れた富士山中腹の空振計*1が爆風を観測するほどの威力だった。爆発によって製造棟全体が類焼。死者2人を含む15人の犠牲を出す大事故となった。同社にとっては70数年振りの死亡事故だった。

*1 空振計 火山の噴火に伴って起こる火口付近の急激な気圧変化によって発生する衝撃波(空振)を検出する観測装置(低周波マイクロフォン)。天候不良で火口が見えなくても噴火の発生や概略規模を計測できるため、噴火可能性のある火山には観測用に設置されている。

 爆発後すぐに富士工場の自衛消防隊が初期消火に当たるとともに、市の消防隊も到着して消火に当たったが、最終的には製造棟全体に類焼した(図1*2。加えて、事務所や倉庫など他の建屋の壁や窓が破損していた他、同製造棟南側にあったキシレン配管が破損・焼損していた。この事故で、現場で作業に当たっていた協力会社従業員のうち2人が死亡し、2人が重傷を負ったほか、同社社員や協力会社従業員、運送会社社員ら計11人が軽傷を負った。

*2 富士市は工場から周囲100mを警戒区域に指定して周辺住民に避難指示を出した。
図1 事故のあった印刷インキ用樹脂製造棟
1階で爆発が発生し建物全体が類焼した。(出所:荒川化学工業)
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 荒川化学工業は、事故2日後の12月3日に社外の識者を交えた事故調査委員会を発足させ、事故原因究明と再発防止策の策定に当たった。プラントの運転を管理するDCS(分散制御システム)や操業記録が全て火災で焼失していたが、事故原因を推定して2018年11月に事故調査報告書(以下、報告書)を公開した1)。本稿では、同報告書で推定した事故原因と発生プロセス(図2)を基に同事故の教訓をみてみる。

図2 事故の推定シナリオ
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