セメダインは従来製品の特性を超える2種類の新しい接着剤を開発した*9。[1]炭素繊維強化樹脂(CFRP)を含む異種材料向け低温速硬化変性シリコーン系接着剤(MS接着剤)と[2]超高張力鋼板(スーパーハイテン材)を含む鋼板向け高耐熱・高強度エポキシ系接着剤(EP接着剤)だ。

*9 NEDOの「革新的新構造材料等研究開発」プロジェクトのテーマ「構造材料用接着技術の開発」に、ISMAの分担研として参画して開発した。

バナナカーブを超えた強度を実現

 一般に接着剤は伸びと強度がトレードオフの関係にあり、特性は「バナナカーブ」の上にプロットされる。これに対し、セメダインが開発しているMS接着剤(異種材料向け)とEP接着剤(超高張力鋼板向け)はどちらも従来の接着剤よりも靱性に優れる。

 MS接着剤[1]は、部品を個別に塗装した後、最終組み立て段階で使用する「アウトプロセス塗装」を想定し、炭素繊維強化樹脂(CFRP)などと金属材料との異種材料接合用途を狙う。

 そのため、接着剤の弾性率を下げて、接合物の熱応力や熱変形をできる限り抑えた。常温から80℃程度までの中温で速やかに硬化。実使用時の寒暖差による熱ひずみを緩和し、かつ耐久性に優れる特性を備える。

 一方のEP接着剤[2]は接着した後、塗装の焼き付けとともに接着剤を硬化させる「インプロセス塗装」に対応。超高張力鋼を含む鋼板(鋼材)の接合を狙う。クルマのボディーを軽量化するための鋼板の薄肉化や高張力化は、騒音や振動の増大とトレードオフになりやすい。EP接着剤を使って高張力鋼板同士を面接合すればボディーの剛性を確保でき、快適性の向上を図れる。

 2つの新しい接着剤の特性、すなわち引っ張りせん断強度と、その硬化物の伸びとの関係を示したのが図7だ。緑色がMS接着剤、オレンジ色がEP接着剤の特性で破線が現時点の設計可能領域を示す。強度と伸び、耐久性を実線の領域まで高めるのが目標だ。

図7 セメダインが開発した新しい接着剤2種の特性
MS接着剤はCFRP向けの低温速硬化変性シリコーン系接着剤でアウトプロセス塗装で利用し、 BMWのi3に使われている現行のCFRP向け接着剤より強度が高い。インプロセス塗装で使うEP接着剤は超高張力鋼板向け高耐熱・高強度エポキシ系接着剤。 (出所:セメダイン)
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高温・高湿の耐久性に優れる

 MS接着剤の材料であるMS樹脂は、ポリウレタン樹脂の欠点を改善できる材料だ〔図8(a)〕。高接着耐久性とプライマーなしでも接着性が高いという特徴を備える。

図8 MS接着剤の構造
MS接着剤の材料であるMS樹脂変性シリコーンの構造(a)。これにエポキシ樹脂をブレンドすることでMS樹脂の柔軟なマトリックス相の中に硬いエポキシドメインが分散した海島構造を作り出している(b)。 (出所:セメダイン)
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 MS接着剤では、エポキシ樹脂をブレンドしてMS樹脂の柔軟なマトリックス相の中に硬いエポキシドメインが分散した海島構造を作り出している〔図8(b)〕。この構造が良好な物性と高い耐久性を実現する鍵となる。

 アルミニウム(Al)合金やCFRPに対してノンプライマーでも良好な接着性を示しており、10MPa以上の引っ張りせん断強度が得られている。硬化物の伸びは100%以上で、かつヤング率(縦弾性係数)も250MPa以上と、ほぼ目標領域の物性を既に実現している。

 図9にMS接着剤の耐久性の一例として、耐湿熱性のデータを示す。温湿度条件が85℃85%RHの環境下においても、引っ張りせん断強度がほとんど低下しないと分かる。接着剤の耐湿熱性は、実用上最も重要な項目。MS接着剤の実用性は高いといえる。

図9 MS接着剤の耐湿特性
MS接着剤をAl合金と接合したときの特性。高温多湿環境の耐久性が高い。 (出所:セメダイン)
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