ABB(本社東京)は2019年7月5日、塗装機の開発製造拠点であるテクニカルセンター(静岡県島田市)において、ロボットによる塗装技術の説明会を開催した(図1)。塗装機の機能やロボットのシミュレーション技術の強化によって、塗料の使用量削減や塗装ラインの稼働率向上、コスト削減などを実現している点をアピールした。

図1 ロボットを使った塗装のデモンストレーション
右側のロボットアーム先端に取り付けられているのが静電塗装機「RB1000i-WSC」。ABBが2019年6月に国内で販売を開始した。(写真:日経ものづくり)
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スプレー幅をワーク形状に応じて調整

 塗料の使用量削減の効果は、「実塗装効率の約10%向上につながる」(ABBロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部長でロボティクス事業部長の中島秀一郎氏)*1。ポイントとなるのが、塗料の無駄を省く機能を搭載した新型塗装機の採用とロボットの動作を事前シミュレーションする技術だ。新型の塗装機として、遠心霧化型静電塗装機「RB1000i-WSC」を2019年6月から日本国内で販売開始した(図2)。

*1 テストでは、従来と比べて10%少ない塗料で同じ厚さの塗装膜を得られたという。

図2 静電塗装機[RB1000i-WSC]
スプレー幅をワークに合わせて調整できる機能の搭載やカートリッジ式の採用によって、無駄となる塗料の量を削減した。センサーやRFIDの組み込みといったデジタル活用で稼働率向上も図る。(写真:日経ものづくり)
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 遠心霧化型静電塗装機では、先端部に取り付けたお椀状の部品「ベルカップ」の回転(遠心力)と表面張力、静電力などで塗料の微粒化とワークへの付着を実現する*2。同方式の塗装機では一般に、塗料が拡散しすぎるのを防いでスプレー幅を一定にするため、ベルカップの外側を覆うように空気(シェービングエア:SA)を流している。

*2 ベルカップの内面に垂らされた塗料は遠心力で外周部に展延していき(フィルム状となり)、外周部の溝で液糸状となって放出。液糸状となった塗料は表面張力や静電力によって微細な液滴状に変化(微粒化)する。微粒化した塗料は静電力によってワーク(塗装対象物)に付着する。

 RB1000i-WSCの新しい機能としてはまず、SAを2系統用意した。各系統のノズルは、穴のサイズや角度、個数が異なっており、実現できるスプレー幅に差がある。これら2系統のSAの強さを個別に制御すれば、スプレー幅を細かく制御できるという。

 従来はスプレー幅が一定だったためワークの形状が細かったり曲面だったりした場合には「無駄にはみ出してしまう部分があった」(同社)。これに対してRB1000i-WSCはスプレー幅をワーク形状に合わせて調整できるため、塗料の無駄が少なくなる*3

*3 粒子径のばらつきを抑えられるようなベルカップの設計も塗装効率の向上には寄与したという。

 塗装機側の工夫に加えて、塗装機を動かすロボット側でも、無駄のない塗装動作を事前検証する数値シミュレーションの活用で効率化を図った。説明会では、同社の汎用プログラミング/シミュレーションソフト「RobotStudio」と、スマートグラスを活用したVR(仮想現実感)を組み合わせ、塗装機とワークとの干渉チェックやロボットの動作プログラム作成などをデモンストレーションした。

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