陸海空の製品群を人工知能(AI)技術で高度化していく─。ヤマハ発動機は2019年5月10日、IPコアプロパイダーのディジタルメディアプロフェッショナル(DMP、本社東京)との資本業務提携を発表した(図1)。DMPに約15億円を出資する。DMPのAI技術を適用した製品を、早ければ2021年に市場投入する考えだ。既存製品の性能を高めて競合他社との差異化を狙う。

図1 資本業務提携したヤマハ発動機とDMP
ヤマハ発上席執行役員で先進技術本部長の藤田宏昭氏(左)と、DMP代表取締役社長CEOの山本達夫氏。ヤマハ発はDMPに15億円を出資する。(写真:日経 xTECH)
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 「AI技術の開発には多くの工数が必要だ。業界の開発スピードも世界的に速い」─。ヤマハ発上席執行役員で先進技術本部長の藤田宏昭氏は、AI開発において直面している課題をこのように述べた。DMPが手掛ける事業を活用して開発工数を減らし、製品化に向けてギアを上げる。

 ヤマハ発は、総額1億ドル(1ドル=110円換算で110億円)を運用する自社ファンドを米国に設立し、先進技術の獲得を急いでいる。ただし、「ファンドは“探索投資”、今回はヤマハ発の本体からの“戦略投資”」(藤田氏)。同社は2018年からDMPに開発委託をしており「実力は十分把握できた」(同氏)ため、ファンドとは別枠で資金を用意した。

NVIDIAとは使い分ける

 DMPは、GPU(画像処理半導体)を製品に搭載して利用するエッジ型のAIコンピューティング技術を得意とする。機器を小型化しやすく、電池駆動の製品に適する。比較的安価なため、ヤマハ発が手掛ける消費者向けの製品との相性が良い。

 一方で、ヤマハ発には既に関係を深める相手がいる。2018年9月に協業を発表したGPUメーカーの米エヌビディア(NVIDIA)で、同社は自社のGPUを使った高性能のAI処理技術を提供する。NVIDIAとDMPは手掛ける事業領域が重なるものの、「NVIDIAの方が高性能だが価格は高い」(藤田氏)とし、製品の性質に合わせてAI技術の調達先を使い分ける方針だ。オープンな関係として、性能や価格はNVIDIAとDMP間で競争させる。

 ヤマハ発は2021年の市場投入を目標に、製品へのAI技術の適用を急いでいる。まずは、DMPが提供する安価な技術を搭載した製品で市場の反応を確かめる。製品化の第1弾として想定するのが、畑などのオフロードを無人で自動走行する農業用車両(Unmanned Ground Vehicle:UGV)である(図2)。果樹栽培などで労働者を支援するもので、これを適用を皮切りに、ヤマハ発が展開する他製品群に横展開していく。

図2 AI技術の適用を狙う製品群
農業用車両UGV(陸)や農業用ヘリ(空)、船(海)などの製品へDMPとNVIDIAのAI技術を搭載。自動制御により付加価値を高める。(写真:左下のランドカーは日経 xTECH、他はヤマハ発動機)
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 農業向け製品は、ヤマハ発社長である日髙祥博氏肝いりの事業だ。新たな収益の柱となる重要事業として位置付けている。同社が手掛けている農薬散布用の小型無人ヘリコプターやドローンといった製品にもAI技術を適用し、安全で効率よく使える製品に仕上げていく。

 例えば、小型無人ヘリコプターで上空から広範囲に農薬を散布するとともに、樹木の陰で農薬が行き届かなかった部分にはUGVが近距離から散布する、といった方法が考えられる。同社はこれら製品を組み合わせ、農業自動化システムとして売り込みたい考えだ。

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