ヤンマーはボートの帰港時などに、岸壁や桟橋の所定位置に自動で着く「自動着桟(ちゃくさん)システム」と、その基になる「ロボティックボート」技術について、「ジャパンインターナショナルボートショー2019」(2019年3月7~10日、パシフィコ横浜・横浜ベイサイドマリーナ)で技術内容を公開した(図1)。同システムは、自船が進むべき軌道を自動生成した上でそれに沿って動き、高い精度で所定位置に止める技術。自動操船技術の一環として開発しており、2020年ごろの商品への応用を目指して「要素技術を1つずつ積み重ねている段階」(ヤンマー中央研究所基盤技術研究部ロボティクスグループグループリーダーの杉浦 恒氏)という。

図1 自動着桟システムの概要
人が操船せずに自動で所定位置に着く。操縦者がジョイスティックに触れていない。(出所:ヤンマー、技術解説用動画から)
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人間に代わりジョイスティックへ指示

 自動着桟システムを実装した試作ボートは、もともと着桟時の操船にジョイスティックを使える。ジョイスティックを真横に倒すと、船は向きを変えずに真横に進む。スクリューは船尾に2軸付いており、軸ごとにスクリューを左右に振れる仕組みとなっている。例えば船に右方向へ横ばいの動きをさせるときは、左右舷の軸を同じ角度だけ外側に開いた上で左舷を正転(前進)、他方を逆転(後進)させる。この機能をそのまま利用し、自動着桟システムが人間に代わってジョイスティックへの指示信号を自動生成して着桟する。

 着桟位置の精度は「人の歩幅程度」。すなわち、それだけずれても人の乗り降りに支障が出ない精度を想定し、実現した。岸壁や桟橋に接近中の自船の位置と向き、着桟後の位置と向きから途中の軌道を決め、水流や風によるズレを補正しながら進む。位置の検出には、衛星からの位置情報と、基準局からの補正情報を併用するRTK-GNSSを用いる。後進、前進、左右舷での接舷も可能(図2)。

図2 狭い場所への自動進入
人の歩幅程度の誤差で位置を決められる。(出所:ヤンマー、技術解説用動画から)
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* RTK-GNSS GPS(Global Positioning System)衛星からの信号に加えて、位置が分かっている基準局を必要とする測位方式。基準局と測定点でそれぞれ観測するGPS信号の位相差から、基準局との位置のズレをリアルタイムで把握する。精度は水平方向で2~3cm、鉛直方向で3~4cm程度。国土地理院の電子基準点(複数)で受信するGPS信号から、測位対象の近くに仮想的な基準点を決め、通信ネットワークを利用して測位するネットワーク型RTK-GNSSもある。

 プレジャーボートに応用すると操船に不慣れな初心者でも安全に着桟可能になる他、漁船では着桟しながら漁網の整理ができるなど、他の作業に充てる時間を増やせるメリットがある。「今後どのようなニーズがあるか、例えばどのような着桟方式がよいか、他の船の間にある狭いスペースを通り抜ける用途がないか、などを調査して実用化したい」(杉浦氏)。

 その際、課題になるのは障害物の検知と回避。当面は完全な無人操船ではなく操船者がいつでも介入できるようにする方針だが、「障害物もブイ、漂流物、クジラなど言い出せばキリがないのでどこまで対応するか、悪天候時にどの風速や降雨量まで耐えられるようにするかなども含め、顧客のニーズに応じて決めていく」(同氏)という。

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