「(ホンダのビジネスジェット機)『HondaJet』を日本の空で飛ばすことは、我々の悲願だった」。2018年12月20日、日本で第1号となる顧客にHondaJetを引き渡す式典で、ホンダの航空機事業子会社ホンダエアクラフトカンパニー(Honda Aircraft Company、HACI)社長の藤野道格氏は、こう語った(図1、2)。ホンダが小型ジェットエンジンと小型ジェット機の研究をスタートさせたのが1986年。それから32年をかけて、同社はついに悲願を達成した*1

図1 日本初の顧客への引き渡しとなったホンダのビジネスジェット機「HondaJet Elite」
HondaJet Eliteは、HondaJetのアップグレード版となる最新型機。
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図2 式典に登壇したHACI社長の藤野道格氏
「HondaJetを日本の空で飛ばすことは、我々の悲願だった」と語った。
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*1 HondaJetの飛行試験が開始されたのは2003年12月。当時は、エンジンに前世代の「HF118」と呼ぶターボファンエンジンを使っていた。現行のエンジン「HF120」を搭載した飛行試験用のHondaJetが初飛行に成功したのは2010年12月である。その後、最高速度425ノット(787km/h)や最高マッハ数0.72、最大運用高度4万3000フィート(1万3106m)、上昇速度3990フィート/分(1216m/分)を記録、機体が持つ性能の高さを立証。2012年10月には量産1号機の生産を開始した。

ゴールではなく新たなスタート

 HondaJetが米国連邦航空局(Federal Aviation Administration、FAA)の型式証明を取得したのは2015年12月。それまでに実施した試験飛行は、実に3000時間超にも及ぶ。同月、HondaJetの米国での引き渡しが始まる。2006年7月の時点では2010年中の引き渡し開始を目指していたが、約5年を費やしての実現となった。航空機事業への新規参入がいかに大変なことだったかを物語っている。

 それから約3年。日本での引き渡しが始まるまでに必要な期間は決して短くなかった。HACIはこの間、米国以外の国・地域でのHondaJetの型式証明の取得と、米国、カナダ、メキシコ、欧州、中南米、中東、中国、インド、日本におけるHondaJetの販売・サポートのためのネットワークの構築にまい進。さらに、HondaJetのアップグレード版となる最新型の「HondaJet Elite」を開発し、2018年5月に発表する。

 同Eliteは、主翼上面へのエンジン配置や自然層流翼(NLF)、自然層流ノーズ、一体成形複合材胴体などのHondaJetの独自技術を引き継ぎながら、複数の最新技術と装備を加えたビジネスジェット機。従来のHondaJetに比べて、航続距離は約17%長い2661km。高周波のエンジンノイズ低減で客室内の静粛性を向上するとともに、アビオニクスシステムの進化で離着陸・飛行時の安定性や安全性を強化する。

 そして2018年6月、HACIは同Eliteを引っ提げ、ついに日本での販売を開始。日本でのディーラーに丸紅エアロスペースを指定する。2018年12月7日、HACIは待ちに待った同Eliteに対する国土交通省航空局の型式証明を取得。今回(同月20日)の日本で初めてのHondaJet Eliteの引き渡しにこぎつける。

 だが、HACIにとっては、これはゴールではなく新たなスタートだ。HACI社長でHondaJetの生みの親でもある藤野道格氏は、冒頭の言葉の後で、こう続けた。「新しい交通システムの創造をめざしていく」と。

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