鉄道総合技術研究所は「鉄道総研技術フォーラム2019」(2019年8月29・30日)で、3D測定を応用した線路設備の検査・管理技術を複数出展した。構造物などの見回り業務、列車に乗って線路の状況を巡視する業務、線路周囲の建築限界の検測業務などをそれぞれ支援し、異状や支障の状況を素早く正確に把握できるようにする。

多数の画像から3Dデータを生成

 「デジタル画像による全般検査の支援技術」は、高架橋などの構造物や盛土を歩いて見回る業務の支援を目的とする。見回りの際に、担当者はカメラ2個が付いたヘルメットを着用し、見えた風景を全部記録する。こうして得た多くの画像から「SfM(Structure from Motion)」により半自動で地形や構造物の3Dモデルを生成し、ビジュアルに全体を俯瞰(ふかん)可能にする(図1)。異状が見つかった際は、その地点を3Dモデル上で指定すると、以前に撮影した画像が出てくる仕組みだ。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
図1 「デジタル画像による全般検査の支援技術」の展示
左は出展の様子で、左手前はカメラが付いた測定用ヘルメット。右は歩いて得た画像群から構成した3Dデータの例。(写真:日経ものづくり)

 これまでは見回りの際、異状のある場所の写真を撮影するのみだったため、以前の状況を示す写真がなく、どのように変化したかを把握しにくい場合が多かったという。新技術では、異状のない場合でも見回り対象を全部撮影して画像を残す。加えて、これらから作成した3Dデータをインデックスとして利用し、ビジュアルな検索で画像を読み出せるようになるため、画像管理用の検査台帳を作成する業務を省力化できる。

 写真からの3Dデータ生成には、「Agisoft Metashape」(ロシア・アギソフト)を利用。データベースは独自に開発した。航空測量などを手掛けるアジア航測(本社東京)と共同で研究を進めた。

運転台から動画撮影し以前との差分を検出

 「画像解析技術を活用した列車巡視支援システム」は、列車の運転台に線路・電気・構造物などの担当者が同乗して、目視で変化や異状を確認する「列車巡視業務」の支援が目的。運転台に取り付けたステレオカメラから得た動画像を画像解析し、線路の周囲の3D形状を算出したり、以前の画像との差分から変化を正確に把握したりできる(図2)。

図2 「画像解析技術を活用した列車巡視支援システム」の展示
ステレオカメラを運転台に設置し、前方を撮影する。得られた多くの画像から3D点群データを生成する。(写真:日経ものづくり)
[画像のクリックで拡大表示]

 ステレオカメラからは、列車の進行とともに1秒当たり数十コマの画像が得られる*1。左右一対の画像を利用して、線路の分岐点など目印になる物体から撮影時の地点や車体の傾きを把握し、カメラの位置と姿勢を特定する。GPSによらずに走行経路を推定する技術を開発した。これによって動画1コマずつの視点位置と視線方向が決まるため、複数のコマを利用する多視点3D計測によって線路周囲の3D点群データが得られる。列車の進行を支障するような位置に建築物や標識がはみ出していないかといった点をチェックできる。

*1 現時点では1秒あたり30コマのフレームレートだが、フレームレートを変更して処理速度の向上を目指す研究も実施している。

 さらに、前回の列車巡視時に得た同地点の画像との比較で、新たに出現した物体や消滅した物体を把握できる。これは3Dでの処理ではなく、前回の画像を変形して新たに撮影した画像に重ね合わせ、輝度を補正した後に差分を明示する。

 「人間の担当者よりも細かく分かるわけではないが、例えば人間は線路左側に変化があるとそちらに意識が集中し、右側の変化を見落とすことがある。新技術ではそういった見落としをなくせる」(鉄道総合技術研究所)。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら