鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は、超電導による電力供給システム「超電導き(饋)電システム」で中央本線の営業用車両(E233系10両編成)を走らせる試験を実施したと2019年8月6日に発表した。鉄道総研日野土木実験所(JR東日本の中央本線日野-豊田間)に長さ408mの超電導ケーブルを敷設し、既存のき電線に並列に接続。超電導ケーブル経由で供給した電力での電車の駆動に加え、電車がブレーキをかけた際に逆向きの回生電流が超電導ケーブルを通ること、超電導によるき電を突然遮断しても不具合が起きないことも確認した。

ケーブル内に液体窒素を循環させる

 超電導き電システムは、電気抵抗がない超電導ケーブルを用いて送電途中の損失(送電ロス)を大きく減らすとともに、送電先(電車)での電圧降下を防止する。通常のき電線は銅合金やアルミニウム合金製で、小さいながら存在する抵抗によって電気エネルギーが熱に変わる損失がある。特に直流電化による鉄道では、10両編成の列車1本で2000Aと大電流になるため、その分送電ロスや電圧降下が大きくなるのが課題だ。

 超電導ケーブルは、真空の断熱層の内側に液体窒素の流路を2つ設け、ビスマス系超電導線材を65~77K(ケルビン)に保つ仕組み(図1*1。同実験所では豊田方の端点に冷凍機とポンプを置き、ケーブル内の液体窒素を循環させる(図2)。日野方の端点には冷凍機はなく、液体窒素は折り返して豊田方へ戻っていく。

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図1 超電導ケーブル
中央本線に沿って、鉄道総研日野土木実験所内に敷設した様子(a)と、超電導ケーブルのサンプル(b)。ケーブルの構造は、大まかには外側から外管、真空層、液体窒素流路(復路)、導体(復路)、導体(往路)があり、中心が液体窒素流路(往路)。これらの層間に補強層や絶縁層がある。(写真:日経ものづくり)
*1 Bi-2223(Bi2Sr2Ca2Cu3O10)超電導体を使用。銅合金をラミネート加工して補強している。
図2 超電導ケーブルの豊田方の終端
超電導ケーブルの片方(豊田方)の端部にだけ冷凍機、液体窒素の循環用ポンプを設置した。写真に見える端末の奥にポンプ、左(写真外)に冷凍機がある。さらにシステム全体のモニター装置、遮断器(スイッチ)などを設置。説明者は研究開発推進部担当部長の富田優氏。(写真:日経ものづくり)
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 この両端点に超電導でない電線をつなぎ、通常の運転に使っているき電線まで引き出して接続した(図3)。接続したき電線は、JR東日本日野変電所から豊田方面に向かう下り線用。変電所から約300m離れたところから約700mのところまでの400mのき電線と、超電導き電システムが並列の状態になる。

図3 超電導き電システムの試験概要
中央本線日野-豊田間の線路わきにある鉄道総研日野土木実験所に長さ408mの超電導ケーブルを敷設し、既存のき電線と並列に接続した。(鉄道総合技術研究所の資料を基に日経ものづくりが作成)
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 並列が終わると、き電線はその先でトロリー線につながる。その位置は同実験所の脇にある下り線エアセクション*2よりも豊田方となっており、ここが超電導き電システムによって電力を供給する試験区間になる。

*2 エアセクション
トロリー線(架線)の送電系統を区切るためにトロリー線が入れ替わる区間。

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