金属材料を造形できるアディティブ・マニュファクチャリング(AM)装置/3Dプリンターの新製品を市場投入する国内メーカーが相次いでいる。三菱重工工作機械(本社滋賀県栗東市)は2019年3月に新製品「LAMDA200」の初号機を納入し、5月にはオプションとして2つの新技術を発表。ニコンは同年4月に設置面積が小さくて低価格な金属AM装置「Lasermeister 100A」の受注を開始した。

 金属AM装置に関してはドイツをはじめとした欧州や米国のメーカーが実績で先行している。今後、ユーザー側での金属AM活用が世界中で急拡大すると予想される中、日本メーカーは造形品質や使い勝手、価格面などで差別化を図ろうとしている。

大型金属造形を大気環境で可能に

 三菱重工工作機械は、金属3Dプリンターの造形品質を高める2つの新技術を発表した。不活性ガスを吐出して造形時に金属が酸化するのを防ぐ「ローカルシールド機能」と、溶融状態を監視して造形条件にフィードバックをかける「モニタリングフィードバック機能」である。同社社長CEO(最高経営責任者)の岩﨑啓一郎氏は「大型の金属部品を3Dプリンターで造形する際の課題を解決でき、航空宇宙産業などでの活用を広げられる。これら2つの機能を実用化したのは世界で初めて」とする。

 新機能は、LAMDA200のオプション機能として提供する(図1)。LAMDA200は、「指向性エネルギー堆積法」(Direct Energy Deposition:DED、デポジション方式)を採用する。同方式は、造形したい場所に材料の金属パウダーを投入すると同時にレーザー光を照射し、金属を溶融・凝固させて積層していく。いわば肉盛り溶接のような手法だ。

図1 三菱重工工作機械の金属3Dプリンター「LAMDA200」
初号機は滋賀県工業技術総合センターに納入した。(出所:三菱重工工作機械)
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 平らに敷き詰めた金属粉末の上面をレーザーなどで走査し、選択的に溶融・凝固させて積層していく「粉末床溶融結合方式」(パウダーベッド方式)と比べて、単位時間当たりに造形できる体積は10倍ほどで、造形を高速化できる。

溶融部分をシールドガスで覆う

 ローカルシールド機能により、チタン合金やアルミニウム合金など酸化を嫌う材料で造形する際も造形エリアを密閉する必要がなくなる。これらの材料を大気環境で造形すると酸化し、強度低下の原因になるため、従来は造形エリアを密閉空間のチャンバーとして窒素やアルゴンなどの不活性ガスで満たす必要があった。しかし、この方法は装置が大がかりになり、造形できる製品のサイズが限られる。

 そこで、レーザー光や金属パウダーを吐出する「ノズル」に改良を加えて、シールドガスをノズルの周縁部から吐出する構造にした(図2)。材料が造形物に堆積する、高温な金属溶融部だけをシールドガスで覆う。このノズルを取り付ければ、かさばるチャンバーが不要になって、造形エリアを拡大しやすい

(a)
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(b)
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図2 ローカルシールド機能の概要
中心から外側に向かって、レーザー光、金属パウダー、シールドガスを出力するノズルの構造(a)と、チタン合金製部品を試作する様子(b)。(三菱重工工作機械の資料を基に日経ものづくり作成)

* 既存のノズルを装着したLAMDA200に改良したノズルを後から取り付けて交換できる。

 不活性ガスはこれまでも、金属パウダーを吐出する用途にも使っていた。しかし、「金属パウダーを金属溶融部に集中させる目的で吐出していたので、周辺の空気を巻き込んでしまっていた」(同社技術本部副本部長の二井谷春彦氏)。造形中に周辺の空気が溶融部に流れ込まないようにするため、熱流体解析を使ってノズルの形状やシールドガスの流し方を検討したという。

 その結果、「金属溶融部の酸素濃度を極限まで低減できた」(二井谷氏)。チタン合金「Ti-6Al-4V」を造形して疲労強度を測定したところ、鍛造品と同等の結果を得られた。

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