「衝突装置(Small Carry-on Impactor、SCI)の分離運用はほぼ想定通りだった」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2019年4月11日に開催した記者説明会で、同月5日午前10時56分(探査機時刻、日本時間)に実施した小惑星探査機「はやぶさ2」のクレーター生成実験のためのSCI運用に関してこうコメントした。

 はやぶさ2本体からSCIを分離し、小惑星リュウグウ表面に重量2kgの銅塊の衝突体を打ち込む運用を完全に成功させた。実験の実施後すぐに開かれた4月5日の記者会見で津田雄一・プロジェクトマネージャーらがミッションの成功自体は宣言済みだが、詳細なデータ解析で成功を改めて確認した形だ(図1)。

図1 SCI運用実施後すぐの会見で成功宣言
4月5日の会見で「成功」の文字を拡げる関係者たち。前列左より、三枡裕也・航法誘導制御担当、武井悠人・探査機システム担当、佐伯孝尚・プロジェクトエンジニア、津田雄一・プロジェクトマネージャー、澤田弘崇・サンプラー/DCAM3担当。後列左から、荒川政彦・神戸大学教授(SCI/DCAM3科学観測担当)、吉川真・ミッションマネージャー。(写真:松浦晋也)
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惑星の誕生や生命の起源を探るサンプル

 同実験ははやぶさ2によるリュウグウ探査のハイライトというべき、新規性も難易度も高い実験。重さ2kgの銅塊の衝突体(図2)をリュウグウ表面に打ち込んで、人工クレーターを作り、形成状況を観察する。さらにできたクレーターの内部や形成時の噴出物(イジェクター)から、宇宙放射線による宇宙風化を受けていない表層下のかけらの採取を試みる。太陽系生成時、小惑星は衝突による破壊と破片の集合を繰り返して生成されたと考えられており、小惑星の誕生や生命の起源を探る上で貴重なサンプルになる可能性がある。

図2 衝突装置(SCI)の爆発部
円すいの内部で火薬を爆発させて、底面の銅板を吹き飛ばして衝突体とする。想定通りなら、2km/sの速度でリュウグウに衝突する設計。(写真:日経 xTECH)
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 5日の実験終了後にはやぶさ2から取得画像のダウンロードが行われ、はやぶさ2本体の観測カメラ「ONC-W1」が取得した画像でSCIが正常にはやぶさ2から分離できたこと、衝突の瞬間を観測するリモートカメラ「DCAM3」からの映像でリュウグウ表面物質が衝突によって噴出している様子(イジェクター・カーテンという)が確認できていた(図3、4)。

図3 中間赤外カメラで撮影したSCI
上方がリュウグウの北極方向。左下に写っている円形の物体がSCI。(出所:JAXAが公開した動画のキャプチャ、JAXA、足利大学、立教大学、千葉工業大学、会津大学、北海道教育大学、北海道北見北斗高校、産業技術総合研究所、国立環境研究所、東京大学、ドイツ航空宇宙センター、マックスプランク研究所、スターリング大学)
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図4 SCI作動の約3秒後に撮影した噴出物
分離カメラDCAM3のデジタル系カメラでの撮影。SCIのライナーの衝突によって発生した噴出物と推定されている。(出所:JAXA、神戸大、千葉工大、高知大、産業医科大)
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 SCI運用では爆発により衝突体を打ち出すSCIを5日午前10時56分(探査機時刻)にまず分離。その後はやぶさ2は、衝突で飛散する噴出物を回避するためにリュウグウの陰に退避する途中、午前11時31分にDCAM3を分離した。はやぶさ2本体が待避後、SCIは内蔵タイマーで分離40分後の午前11時36分に動作して爆発。リュウグウの赤道よりやや北、「S01」と命名した地域に衝突体を打ち込んだ。

 JAXAは一連の動作をデータと突き合わせて検証、ミッションの成功を確認した。本体の健全性はSCI作動後に確認済み。原稿執筆時点では、ホームポジションとなるリュウグウの北極から高度20kmの位置に、はやぶさ2本体を復帰させる運用を進めていた。復帰は4月18日ごろの予定だ(図5)。

図5 SCI実験のホームポジション復帰までのはやぶさ2の動き
リュウグウからの噴出物を回避するため、はやぶさ2はいったんリュウグウから100km離れ、2週間かけて大きく迂回し、ホームポジションに復帰する。(出所:JAXAの資料)
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