図1 ジェット旅客機「MRJ」の状況について語る三菱航空機社長の水谷久和氏
(写真:日経ものづくり)

 三菱航空機(本社愛知県・豊山町)は2019年4月16日、同社が開発中の小型ジェット旅客機(リージョナルジェット)「MRJ90」の開発状況について説明会を開催した。2020年半ばを予定している量産初号機の納入まであと1年余り。同社社長の水谷久和氏は「これからが正念場。初号機納入に向けて全力で取り組んでいく」と意気込みを語った(図1)。

航空当局による飛行試験が始まる

 機体の安全性などを航空当局が証明する「型式証明」(TC)の取得が最後の山場となる。2019年3月3日、航空当局である国土交通省航空局(JCAB)のパイロットが操縦して行う型式証明飛行試験(TC飛行試験)が米国ワシントン州モーゼスレイクで始まった(図2*1

図2 型式証明(TC)飛行試験を開始したMRJ
国土交通省航空局のパイロットが操縦して安全性能などをチェックする。(出所:三菱航空機)
[画像のクリックで拡大表示]
*1 2018年12月時点では、2019年1月下旬頃からTC飛行試験が実施される予定だった。

 三菱航空機が国土交通省に型式証明を申請したのは2007年。その後、安全基準や環境基準への適合性を確認するための書類審査や地上試験などを進めてきた。今回のTC飛行試験では空中でのエンジンの再始動や補助動力装置の機能などを確認する。今後、その他の試験項目についても準備が整い次第行っていく。

 MRJは日本初となる国産ジェット旅客機である。航空機のTCは日本と米国、欧州などの航空当局の間で相互承認の仕組みが整っているが、日本の航空当局が新規開発のジェット旅客機を審査するのは初めてのこと。JCABはFAA(米国連邦航空局)と連携して専門研修を拡充するなど、欧米の航空当局と共に安全性審査を実施してきた。

 2019年3月下旬からはTC飛行試験にFAAのパイロットが搭乗するなど、JCABとFAAがTC飛行試験に共同参加できる体制も整えた。MRJは日本の航空機メーカーが開発し、日本で製造するジェット旅客機ではあるが、現時点での受注実績からいっても米国市場は最大のターゲット。FAAからのTC取得を円滑に進める狙いがある。

 TC飛行試験は、TC取得に向けた最終検査のような位置づけで、飛行試験に加えて2019年3月24日には−40~50℃という極限環境試験も開始した(図3)。「同様の試験は社内試験として実施しており、成功している」(水谷氏)と自信を見せる。社内試験としては、2019年3月と4月に米国テキサス州で横風試験を行うなど、TC飛行試験に先駆けてさまざまな飛行試験を実施している(図4)。

図3 2019年3月24日に実施された極限環境試験
―40~50℃という環境でのエンジンなどの動作を確認する。米国フロリダ州エグリンにあるマッキンリー極限気候研究所で実施した。H12(出所:三菱航空機)
[画像のクリックで拡大表示]
図4 横風試験の様子
強い横風の影響を受ける中で安全に離着陸できるかを試験する。2019年3月と4月、米国テキサス州で社内試験として実施した。(出所:三菱航空機)
[画像のクリックで拡大表示]

 MRJはこれまで5回にわたって量産初号機の納入時期を延期してきたが、2017年1月に発表した最後の延期の理由は、TC取得に向けた検討を進める中で電気配線の設計を変更する必要が生じたためだった。

 実は現在のTC飛行試験で使っている機体は設計変更前の機体。設計変更に対応した飛行試験機は現在、日本の工場で2機を製造中だ。うち1機は2019年第2四半期(6月まで)に完成させ、飛行試験を開始する計画である。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら