IHIの航空機エンジン事業で検査不正が発覚した。国土交通省東京航空局の立入検査により、同社が民間用航空機エンジンの整備で、必要な資格を持たない作業者が検査業務を行っていた「無資格者による検査(無資格検査)」を含む不正を行っていたと明らかになった。2017年9月の日産自動車から始まり、SUBARU(スバル)、スズキ、マツダ、ヤマハ発動機と自動車分野で発覚してきた検査不正が航空機分野にも広がっていると判明した。

 不正に手を染めていたのは同社瑞穂工場(東京都・瑞穂町)。検査現場が2つの不正を犯していた。[1]無資格検査と[2]規定違反である。IHIが2019年3月8日に東京・豊洲本社で開いた会見で、代表取締役社長の満岡次郎氏と、同社取締役で航空・宇宙・防衛事業領域長の識名朝春氏が自社調査の結果として明らかにした(図1)。

図1 不正について説明するIHI社長の満岡氏(左)と識名氏(右)
(写真:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 IHIが調査したのは、全体の一部。国交省が認定する航空機エンジンのうち、過去2年分の21台に絞って調査を行った。その約4万件の検査記録を調べた結果、半数以上に当たる13台の航空機エンジンに、合計211件の不正があったと判明した。

 検査不正を行った現場では、有資格者の検査員(指導者)がOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じて、資格取得を目指す作業員(訓練生)を育成していた。この過程で、本来は有資格者が行わなければならない検査作業を、指導者が指示して訓練生に実施させたのが今回の検査不正の実態だ。検査不正を行った検査員は32人に上る。「不正を行った検査員には、間違っていることをしている認識はあった」(IHI)という。

「有資格者が行った」かのように押印を偽装

 航空機エンジンの整備工程は、エンジンの受け入れから運航中のモニタリングまで10工程。このうち、不正が行われていたのは、「(部品)修理検査」と「エンジン組み立て」、「組立検査」の3工程である。

 [1]の無資格検査が見つかったのは、修理検査工程だ。米国連邦航空局(FAA)が認定する資格を持つ検査員(有資格者)が行わなければならない外観検査を、無資格の検査員(訓練生)が行っていた。

 この不正の具体例として、IHIは航空機エンジンのファンブレード(羽根)を挙げた(図2)。ファンブレードは飛行中に摩耗するため、必要に応じて研磨修理や、潤滑膜の再塗布、ゴム製支持パットの張り替えを行う。それぞれの作業後に検査を施した後、ファンブレード全体の外観検査を実施する。この外観検査を無資格者が行っていた(図3)。さらに、無資格者が、有資格者の印鑑を使って検査成績書に押印していた。外観検査を有資格者が行ったかのように偽装したのである。

図2 無資格検査が行われていたファンブレード
IHIの資料を基に日経 xTECHが作成。
[画像のクリックで拡大表示]
図3 ファンブレードの整備に対する不正の内容
外観検査を無資格者が行った上、有資格者の印鑑を押して有資格者が検査したように偽装した。(出所:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 無資格者による外観検査と押印の不正は、合計208件見つかっている。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経ものづくり」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら