三菱電機は2019年2月13日、研究成果披露会を都内で開催した。会場では最新技術を適用した試作機やコンセプトモデルなどを22件展示。そのうち8件が人工知能(AI)に関する技術だった。同社はAI技術のブランドとして「Maisart(Mitsubishi Electric's AI creates the State-of-the-ART in technology)」を掲げており、さまざまな分野でAI技術の適用を進めている。

 AI技術の適用先として注力しているのが生産現場だ。披露会では、レーザー加工機の加工条件を最適化する技術や人の動作の違いを見分けてカイゼン活動を促進する技術などについてデモを行った。ここではその生産現場のスマート化を推進するAI技術を紹介する。

自動判定でレーザー加工の条件を最適化

 まず会場で目を引いたのが、熟練技術者に頼らず、短時間にレーザー加工の加工面の異常を検出する技術だ(図1)。産業技術総合研究所(以下、産総研)と共同開発した「工場での生産準備を効率化するAI技術」の1つとして開発した。

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図1 ワークの加工品質から加工条件を最適化
レーザー加工した金属サンプル(a)。加工品質の解析結果などを表示している(b)。「溶融付着」「酸化膜はがれ」「上面荒れ」「キズ」「中面荒れ」といった加工品質の解析を通して、「レーザー出力」「切断速度」「ガス圧」「焦点位置」「ビーム倍率」といった加工条件について、どう変更すればよいのかを判定する。

 レーザー加工後の加工面の画像からAIを用いて加工品質を解析し、キズや溶融付着などの異常を即座に見つける。その後、AIとは別に三菱電機が開発したソフトウエアで、AIで見つけた異常から、その異常を発生させないようにするために最適な加工条件を判定する。現状は熟練技術者がワークの加工面を目視し、技術者の判断でレーザー加工機の加工条件を調整している。しかし、熟練技術者といっても目視による加工面の判断には時間がかかる。また、生産現場の人手不足が深刻化してきているため、熟練技術者に頼らずに加工面の異常を正確に見つけ、加工条件を調整する必要性が生じている。AIによる加工面の判定と、ソフトウエアによる加工条件の最適化は、こうした時代の要請に応えるものだ。

 金属のレーザー加工の加工条件を最適化するデモンストレーションは、次のような手順で行われた。まず、金属サンプルの加工面をデジタルカメラで撮影。AIが「酸化膜はがれ」と「上面荒れ」の異常があるという解析結果を出した。この異常が発生しないように、「レーザーの焦点位置の変更」を指示する判定が返ってきていた。

 このAIによる解析には、産総研が開発している画像認識向けの学習手法を用いた。画像解析後の最適な加工条件を判定するソフトウエアの開発について三菱電機の説明員は、「加工品質と最適な加工条件の対応について、生産現場から聞き取った結果を反映した。実際に、AIによる判定の精度は高い」と話す。

 加工条件を最適化するAIは、レーザー加工機に搭載するだけでなく、検査機のような後付け製品への搭載なども考えているという。

カイゼン活動にかかる時間を短縮

 作業者の動作を計測し、その3次元位置データから動作の無駄などを発見して、生産現場のカイゼン活動を促進する技術についても展示していた。「人のわずかな動作の違いも見つける行動分析AI」だ。

 新人作業者の動作をビデオカメラで撮影した動画で分析し、モデルとなる熟練技術者の動作との違いを見つけてカイゼンする手法はある。しかし、この手法では、新人作業者の動画をすべて見直し、熟練技術者の動作と比較する必要があり、非常に時間がかかった。AIを用いて、作業者の動作を数値化し、そのデータを解析して両者の動作の違いを見つけられるようになれば、動画を全て確認する時間が不要になり、解析も正確にできる。

 会場では作業者に見立てたロボットを用いてデモンストレーションを披露した(図2)。デモは以下のようなものだ。撮影対象の動きの3次元位置データ(縦・横・高さ)を取得できる3次元カメラの前でロボットが両手を動かす。3回動作を繰り返すが、そのうち2回は同じ動作で、1回だけ少し異なる動作をする。するとAIが、3回の動作の3次元位置データから、動作の違いをディスプレー上に示す。例えば、ロボットの左手と右手の動きの3次元位置データを図示するとともに、動作が違った時の動画を表示、再生して確認できる。

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図2 「人のわずかな動作の違いも見つける行動分析AI」のデモンストレーション
作業者に見立てたロボットを3次元カメラで撮影して行動分析した(a)。動作に差異があった動画をすぐさま表示できる(b)。海外工場だと現地でカイゼン活動ができない場合もある。同技術を用いて、動作の差異データだけを送ってカイゼン活動を進められる。
* 別の技術を用いて、撮影した動画から3次元位置データを生み出している。AIは、その3次元位置データを利用して解析している。

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