「すべての人に産業用ロボットを」をスローガンに掲げ、工場や倉庫での作業の自動化を狙って汎用の知能化ロボットコントローラーを提供するMUJIN。ばら積みピッキングの自動化を、しかもティーチレスで実現できるとして急成長を遂げている。同社が目指すのは産業用ロボットのオペレーションプラットフォーマーだ。(聞き手=吉田 勝)

写真:栗原克己

 MUJINの中核技術は、ロボットアームの軌道を算出するモーションプランニングAIと、アームの動きを生成する逆運動学計算にあります。共同創業者で当社のCTOであるデアンコウ・ロセン(Rosen Diankov)が持つ技術を生かしたものです

* ロセン氏は、ロボットのモーションプランニングエンジンのオープンソース「OpenRAVE」の開発者として知られている。

 ただ、基本的な技術そのものは当社独自というわけではなく、以前からあるものです。ではMUJINのそれは何が違うのか。端的に言えば、それらの技術を産業用ロボットによる工場や倉庫での作業において実際に使えるように改良し実績を積んだということでしょう。技術として存在することと、実際に使える商品として存在することには、天と地ほどの大きな差があります。

計算量を減らしながら最適解を出す

 例えば、ばら積みピッキングの軌道。算出自体は可能でも、計算に時間が掛かりすぎたり、出てくる軌道が安定しなかったりする課題がこれまではありました。「ティーチレスでロボットを動かせます」と言っても、アームの軌道計算に10分も20分も費やしていては使い物になりません。無理に計算時間を短くして、結果として作業に時間のかかる軌道を算出するのも本末転倒です。

 モーションプランニングや逆運動学計算は膨大な計算量が必要な上に解が幾つもあります。しかしこれを工場のピッキング作業などに適用するなら、瞬時に最適な解を導出できなくては使い物にならないのです。

 単に作業時間の短い軌道ならなんでもいいわけでもありません。例えば、計算に15秒かけて最速の軌道を見つけ出すより、それより2秒遅いが0.5秒で軌道を計算できる方がいいですよね。そういった点も考慮しなくてはならない。また、いくらロボットにとって最速の軌道でも、重量物のワークをむやみとぶん回すようなものでは危なく使えません。

 つまり、空間的・時間的制約や作業環境など、さまざまなパラメーターを加味した上で幾つもの軌道を計算して、どれが最適かを計算時間も含めて瞬時に判断しなくてはならない。これを3Dマシンビジョンでワークを認識しながら、都度解いていくわけです。これが我々が持つ技術なのです。

 MUJINのアームの軌道計算の技術は、モーションプランニングAIで幾つもの軌道の候補を計算しつつ、第1軸の加速度が○○以上になったらその軌道の計算を止めて次の候補を計算するなど、計算量をどんどん減らす工夫をしている点に特徴があります。加速度やトルクなどの多数のパラメーターを考慮しながら、無理がなくかつなるべく最短で済む軌道を瞬時に導き出すのに成功したのが、MUJINが他の追随を許さない理由です。

 加えて、ワークを認識する独自の3Dマシンビジョンシステムも開発しました。実用化までにはそれなりに期間を要しましたが、今でも、当社の3Dマシンビジョンのように形も包装形態も異なる複数種類の対象物を精度良く認識できるシステムは他にはそうないはずだと自負しています。

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