図面をアップロードするとわずか7秒で見積価格を表示、各種板金部品をオンデマンド発注できるサービス「CADDi」。高い利便性が評価され、創業1年強で累計3000社が利用、2018年12月には総額10億円の資金調達に成功した。社会課題を解決するビジネスを目指したスタートアップの創業者が狙う、理想の未来を聞いた。(聞き手は本誌編集長 山田剛良)

写真:加藤 康

 優秀な技術を持つといわれる国内の町工場の多くが経営的には苦境にあります。全体の75%が赤字経営で、平均で見ると約半分の売り上げを特定の1社に依存している状況です。そこにフラれたら潰れるわけで、実際、過去30年で町工場は半分なくなっています。こんな状況を一気に解決できるサービスを提供したい。そう考えて2017年11月に最高技術責任者(CTO)の小橋昭文と2人でキャディを起業、受発注プラットフォーム「CADDi」のサービスを開始しました。

 CADDiは板金加工部品をオンデマンド発注できるサービスです。顧客は造りたい部品の3D-CADデータをアップロードして素材や個数、納期などを入力するだけ。システムが図面を解析して7秒で見積金額を表示します。後は「発注」ボタンを押すと、我々が手配して部品を造り、検品・梱包して納品します。価格も納期も当初に表示した通りです。

 図面さえ用意してもらえれば、あらゆる板金部品に対応できます。いちばん多いタイプの顧客は、産業機械など1品モノの製品を扱う企業。こうした製品は多いときは全部で300点くらいの板金部品を使うのですが、CADDiならこれを一括で請け負えます。従来は幾つかの協力工場に分散して発注する必要があり、調達の担当者は調整にとても苦労していました。

 CADDiを使うとその手間を省ける上、価格もおおむね2割くらい下がる。しかも短納期です。サービスを評価いただいて、サービス開始からの1年強の累計で顧客企業数は約3000社に達しました。毎月約300社の新規顧客のうち半分くらいがリピーターになってくれます。

図面から製造工程を自動で導出

 我々の強みは高度なテクノロジー、製造業の調達の専門知識、リアルなサプライチェーンを回す人材の3つをそろえているところです。

 まずテクノロジー。3DCADの図面データを自動解析して、製造工程をはじき出すアルゴリズムを独自開発しました。その部品をどうやったら造れるか。板を用意して、輪郭に沿って切断し、穴を開けて曲げて溶接して塗装するといった具体的な工程に分解します。

 製造工程が分かれば、現在100社あるパートナーの町工場の中でどこの工場ならその部品を造れるか分かります。それぞれの町工場に実際に発注した場合に、価格が幾らになるのか、工程と材料費などから町工場ごとの製造原価を正確に推定するQCD(クオリティー・コスト・デリバリー)モデルも持っています。

 このようにして、3D-CAD図面などのデータから現在約100社あるパートナーの中で、最も安くて最も納期が早い町工場を瞬時に選び出せます。システムが顧客に提示する見積価格はこの製造原価を元に算出するので、正確な価格が最初から提示できます。

 こうしたシステムやモデルは高度なソフトウエアの技術はもちろん、板金部品の製造プロセスや製造業の原価計算に関する深い知識がないと作れません。また、実際にパートナーの町工場に部品を発注し、我々が製造責任を負って顧客に納品するので、品質保証の知識やサプライチェーンを実際に回せる人材も要る。

 我々の強みは、これら全てを兼ね備え、創業から1年以上実際にシステムを動かしてブラッシュアップしてきたところです。普通のソフト会社にはなかなか難しいはずです。

 下請け企業を束ねる商社など従来のモデルと我々が一番違うのは「相見積もり(アイミツ)」をしないところです。価格はシステムが自動的に算出し、手作業での調整は一切しません。製造原価の算出基準はパートナーの町工場ごとに調整して変えています。そうやって推定した製造原価を元に、彼らのマージンも載せて決めるので、受注すれば必ず黒字になる価格になっています。

 実は中小の町工場の多くは見込み顧客からの「アイミツ地獄」で苦しんでいます。社長や専務が業務時間の半分近くを見積もりに費やしているケースも多い。しかもその8割が失注するのです。こうした徒労から町工場を解放し、確実に利益を出せる発注をするところもパートナーに評価されています。

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