次世代航空機エンジン「LEAP」に採用された、TiAl合金製ブレードの量産を手掛けるAeroEdge(本社栃木県足利市)。同社を率いる森西氏は、親会社で新規事業を10年以上開拓し続け、海外大手メーカーとの直接取引開始に結び付けた。5軸加工の将来性に早くから目をつけ、営業への転属を自ら志願した。(聞き手は中山 力)

写真:栗原克己

 当社は2013年にフランスの大手航空機エンジンメーカーであるサフランエアクラフトエンジンズ(以下、サフラン)と契約し、次世代航空機エンジン「LEAP」*1のタービンブレードを製造しています。LEAPは米ボーイングの「737 MAX」や欧州エアバスの「A320neo」といった旅客機で採用されており、大きな需要が見込まれるエンジンです。現在の契約では、同エンジンの35%について10年間に渡って造り続けます。

*1 LEAPを開発するCFMインターナショナルは、米ゼネラルエレクトリック(GE)とフランスのスネクマが1974に設立した合弁企業。2005年にはスネクマとSAGEMが合併してサフランを設立。サフランエアクラフトエンジンズはサフラングループに属する。

 AeroEdgeは菊地歯車(本社栃木県足利市)の航空宇宙部を分割する形で2016年1月に操業を開始しました。菊地歯車の中で新規事業を開拓し続け、大手海外メーカーとの間で量産案件を直接契約できました。

5軸加工の将来性に魅せられる

 私がものづくりの世界に入ったのは21歳のときです。北関東の小さな町工場に就職しました。そこでは工作機械の操作を学び、ものづくりの楽しさと難しさに惹かれました。

 その6年後、27歳で転職した先が菊地歯車でした。歯車に関しての技術力が高いという評判を聞いていたからです。入社後、工場長に1台の旋盤を「好きに使っていい」と与えられ、段取りやプログラミングを経験してノウハウを身につけていきました。

 新規導入する設備の候補を検討する仕事を任され、5軸制御のマシニングセンター(5軸MC)の導入を会社に願い出たこともあります。2004年ごろだったと思いますが、雑誌や展示会などで業界動向の情報を収集しており、3D-CAD/CAMや5軸MCの活用が広がりそうだと感じていました。

 しかし、残念ながら会社から許可は下りませんでした。当時、歯車以外の機械加工のニーズはあったのですが、5軸MCでなければ加工できない形状の案件はほとんどありません。3軸MCでも冶具を工夫し、段取り替えを行えば何とか加工できたからです。

 私は昔から、現在の製品だけでなく、今は手掛けていない製品を想像し、それをどう造るかを考えるのが好きです。多様な製品を考えると、段取りの工夫で対応する方法には限界があります。今は必要なくとも、将来は競争力の源泉としてきっと必要になる、早く取り入れないと他社に置いて行かれてしまうという焦燥感、不安が大きくなっていきました。

営業への転属を志願

 新しい先進的な技術は導入してほしいが、単に「設備を買ってくれ」と言うだけでは始まりません。そこで私は、営業部への転属を願い出ました。自ら需要を創ろうと考えたのです。

 菊地歯車の製品は、ほとんどが顧客の要望に応じて設計する受注生産品です。その営業部門に所属するメンバーは、歯車に関する高度な知見を持ったプロフェッショナルです。そんな部署に、「営業の素人」である私が転属したわけです。

 取引先を新規開拓するには、従来の状況を変える必要があります。そのきっかけとなったのが、営業部長の退職を機に引き継いだ20社の取引先でした。私は、1年かけて20社中17社との取引から撤退したのです。そうすれば、余った工場のキャパを新規開拓した案件にまわせます。

 もちろん、社内からは驚きの声が多く上がりましたが、理由を説明して納得してもらいました。私は、これらの取引先の仕事を継続するメリットとデメリットを事前に十分吟味していました。利益率だけでなく、事業発展の将来性と技術的な価値の高さを考えました。もちろん、撤退した17社には移管先を探して紹介し、迷惑をかけないようにしました。この撤退をうまくまとめた実績が、営業として認められることにつながりました。

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 既存取引先からの撤退を進めつつ、本来の目的である新規取引先の開拓も進めました。各産業の開発、レース、航空宇宙といった部門を中心に新規営業をかけました。将来性があり、技術的な価値が高く、高価格が見込める取引先です。菊地歯車の強みを生かせる仕事を選びました。その結果、既存取引先からの撤退スピードよりも速く新規事業を立ち上げられたのです。

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