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「痛くない注射針」「1枚板から電池ケースを深絞り」など世の中にない製品を高いプレス加工技術で生み出してきた岡野工業。代表社員の岡野雅行氏が85歳になったのを機に、廃業を決めた。跡を継ぐ人はいない。やりたいことをやって仕事には全く悔いはない。しかし、技術を伝えられないのは心残りという。

写真:尾関裕士

 今の天皇陛下と年齢が同じで、85歳になりました。もう仕事はやれませんよ。そりゃ、がんばればまだできますけど、やっぱり限界があります。だからあと2年続けたら、そのあとは廃業すると決めました。

 ところが「やめる」って言ったら、「その前にちょっと手伝ってくれ」って、おかげさまで仕事が今でも来ています。単に部品を造ってくれっていう話ではなくて、製品開発の話ばかりです。こんなのを造ってくれないか、とね。中でも高速鉄道に関する部品のすごい案件があって、私も興味があるから、廃業までにそれだけは完成させようと思っています。

 岡野工業で今造っているものは、取引先で造れるように指導します。テルモさんと開発した「痛くない注射針」も、先方の技術者に3〜4年間来てもらって、その人たちに教えました。もういっぱしの物がテルモで造れるようになっています。他にも自動車部品メーカーの仕事、センサーを手掛ける会社の仕事などがありますが、2年後までに取引先に教え終えるつもりです。

* 2005年に、先端の外径が0.2mmの「痛くない注射針」をテルモからの依頼で開発した。従来の注射針のようにパイプを細くするのではなく、板金を巻いてテーパー状の針を造る。注射針の内側もテーパー形状であるため、径を細くしたにもかかわらず注入抵抗がほとんと増えなかった。