前回(2018年9月号)まで製造の7分類の中から「切削」と「高出力」について紹介してきました。今回は、量産分野で一般的な加工である「塑性」と「成形」について順に述べてみたいと思います。

 まず「塑性」ですが、これは主に金属材料を変形させる、あるいは打ち抜くことによって形状を造り出す加工技術のことです。除去加工ともいわれる切削加工とは異なり、「塑性」は非除去加工による加工方法です。その代表的な加工方法としてプレス加工と製缶・板金加工を挙げることができます。

 特に量産分野で広く活用されているのがプレス加工です。プレス加工は金型とプレス加工機によって行われます。プレス加工における微細加工分野としては、これまで順送プレスによる半導体や電子部品のリードフレーム加工が代表的な存在でした。これは、いわば2次元形状の加工であるといえます。

「切削」から「塑性」への工法転換

 ところが近年ではスマートフォンのコネクターなど、微細な3次元形状の製品をプレス加工(冷間鍛造)により製造する、といったニーズが急速に増えています。従来こうした製品は、焼結金属やMIM(Metal Injection Molding:金属射出成形)のワークを切削加工するなどして製造していました。こうした加工方法をプレス加工に置き換えられれば、コストは1/2~1/3へと劇的に下げられます。

 加工方法を置き換えることにより、コストを大幅に下げる取り組みを「工法転換」といいます。前述したように、近年ではスマートフォンやIoT(Internet of Things)の普及により、従来は「切削」を伴う工法で造っていたコネクターなどの部品を、コストダウンを目的として「塑性」により加工することが大きなニーズとなっています。そのため、従来のプレス加工では困難あるいは不可能とされてきた形状や精度であっても、プレス加工に置き換える「工法転換」技術が求められています。

不可能を可能にしたプレス加工会社

 例えば埼玉県草加市に本社・工場を置くエムアイ精巧(従業員32人)も、「工法転換」に積極的な企業の1つです。同社は、板厚よりも小さなサイズの穴開け加工を、プレス加工で行うことに成功しています(図1)。このような微細な穴開け加工は、これまでプレス加工では不可能とされてきました。プレス加工での穴開け加工は、パンチと呼ばれる金型を使います。この際、板厚よりも小さなサイズの穴は、板厚よりも細いパンチ金型で加工することになるため、パンチが折れてしまうのです。

図1 プレス加工における微細穴加工の事例
(出所:エムアイ精巧)
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 ところが同社はパンチ金型に工夫を凝らし、加えてプレス加工機の条件設定を最適化することにより、「従来は不可能」といわれた加工技術を可能としたのです。さらに同社は、プレス加工でありながら、公差μm台という切削加工さながらの精度を実現しています。

 前回(2018年9月号)紹介した「セラミックスに放電加工を行う町工場」同様、同社も「従来は不可能」とされた微細穴プレス加工を可能にしました。各分野でこうした尖った技術を持つ部品加工業の集積こそが、日本の強みと言っても過言ではないでしょう。

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