AR/VRのヘッドセットがテレビやスマホに取って代わる未来が見えてきた。既存のテレビが「視る」だけ、スマホが「つなぐ」だけなのに対し、AR/VRは時間と空間を超える「体験」ができる点で底なしの潜在力を秘める。この潜在力に注目して、GAFMや大手テレビ局が、AR/VRを次世代のコミュニケーション手段やコンテンツ表示技術として捉え始めた。

 「AR/VRは次世代コンピューティング技術だ」─。米Facebookが2019年9月末に開催したVRグラス関連のイベント「Oculus Connect 6(OC6)」に登壇した同社 共同創業者兼会長兼CEOのMark Zuckerberg氏は、基調講演の冒頭でこう述べた。同氏はFacebookが2014年に約20億米ドル(2000億円超)をかけてOculus VRを買収したころからずっとAR/VRを推しているが、今回のOC6はZuckerberg氏の言葉に技術開発が追い付きつつあることを示すものになった。

 例えば、遠く離れた仕事仲間や家族があたかも同じ部屋に居るかのように感じる「ソーシャルテレポーテーション(Social Teleportation)」や、物理的制約を超えてさまざまな芸術性や創造性を発揮できる仮想都市「Facebook Horizon」の発表など、まるでSFのような技術や異世界を構築しつつある。遠くない将来にAR/VRがテレビやスマートフォンに代わることさえ現実的と思わせるイベントとなった。

GAFAMとBATHが巨額を投資

 AR/VRに注目している巨大企業はFacebookだけではない。米国企業ではGAFM(Google、Apple、Facebook、Microsoft)、中国企業ではBATH(Baidu、Alibaba Group、Tencent、Huawei Technologies)のいずれもが、AR/VRを今後の高成長のけん引役と位置付け、それぞれの開発を進めている(図1)。NTTドコモが2019年4月に約300億円出資した米Magic Leapには、GoogleやAlibaba Groupなどから明らかになっているだけで計約2800億円以上がつぎこまれた。実際にはその2倍以上の額が投資されているとの噂もある。

米ODG製「R-9」
2013年にMicrosoftが特許技術を1.5億米ドルで取得との噂。KDDIが2018年に提携。2019年に倒産
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中国Nreal製「nreal light」
88gと非常に軽量。2019年5月にKDDIと提携
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HP製「HP Reverb」
HPが片眼2Kの表示デバイスを独自に設計して製品化
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米Microsoft製「HoloLens 2」
2019年に発売予定
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米Facebookと中国Lenovo製「Oculus Quest」
2014年にFacebookが20億米ドルで米Oculus VRを買収して開発。2019年に製品化
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米AppleのARグラス関連特許
2019年9月19日公開。FOV(視野角)が120度と非常に広い
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米Magic Leap製「Magic Leap One」
2014~2018年の間に、Google、中国Alibaba Group、サウジアラビア政府系ファンド、米AT&T、NTTドコモなどが計25.8億米ドル(約2800億円)以上を出資(うち、NTTドコモは300億円)。 2018年に米国で発売
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「HUAWEI VR Glass」
中国Huawei Technologiesが2019年9月に発表
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中国BaiduのVR教室 
Baiduはハードウエアよりも、VRのプラットフォームやアプリ開発に注力中 
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中国Tencentと米Qualcomm
Tencentは2019年7月末、AR/VRおよび5G向け各種ゲームをQualcommと共同開発すると発表
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図1 GAFMや中国版GAFAのBATH、HPなどが巨額を投じて開発
GAFM(Google、Apple、Facebook、Microsoft)や中国版GAFAと呼ばれるBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)のVRグラスへの出資や開発例、およびVRグラスの開発で注目のベンチャーの製品群を示した。(写真:R-9、nreal light、HP Reverb、Magic Leap One、Oculus Quest以外は各社、図:Appleの特許は「US 2019/0285897 A1」)

 今後の高成長への期待も高い。大半の調査会社がAR関連市場は今後、年平均成長率(CAGR)80%前後と猛烈な勢いで成長すると予測する(図2)。

図2 AR関連市場は急拡大予想でほぼ一致するものの、VRは伸び悩む予測も
英Consultancy.ukによるAR/VR関連世界市場の2018年7月時点での市場予測。AR関連市場は2016年から2022年までの間に年平均85.4%の増加率で成長し、2022年時点で17兆円超になるとみる。一方、VRは年平均成長率がARの約半分の44.5%にとどまり、2022年時点で約1.9兆円と予測する。(図:Consultancy.uk)
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 半導体やIT産業の世界で「高い成長率」といわれるのがおよそCAGRが40%前後の事業だ。市場規模が2年で約2倍になることに相当する。それをさらに超えるCAGR80%という成長率は、過去に例を探してもなかなか出てこないだろう。

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