国内の大学が産業界とのパイプ作りに躍起になっている。文科省から受ける公費が減り続け、収入源を企業に求めているためだ。企業も研究開発の効率化や、将来の成長源の創出、AI(人工知能)技術者の確保のため、大学の力をこれまで以上に必要としている。大学と企業の取り組みは、既存の共同研究から、経営ビジョンの創出、起業、人材育成に広がってきた。

 工学部を抱える国内大学が、産業界からの資金集めに必死になっている。文部科学省から受ける公費(予算の約4割を占める運営費交付金)は、独立法人化した2004年度以降、ほぼ毎年減り続け「切れたランプやプリンターのトナーを交換する予算がない」(国立大学の関係者)との声が上がるほど。大学が強欲に収益を追求することはないものの、知の探究と教育という使命を果たすため自ら稼ぐ必要に迫られている。

 この15年間に減った公費は2000億円近く。その“穴”を埋める資金の出し手として期待するのが「企業」(東京大学 産学協創推進本部 副本部長の福田敦史氏)だ。そこで蓄積してきた知材・人材への産業界から1企業当たり数十億円といった大規模投資に期待する。「大学にはそれだけの価値がある」(福田氏)というのが大学側の見立てだ。

 ここ数年、大学が競うように企業との「共創」「連携」を進めるのは、大学が蓄えた価値から運営・研究資金を生み出す挑戦でもある。価値とは、研究開発力、特許などの知的財産力、知財や人材に基づく起業力などだ。すでに一部の企業が、自社の事業活動に、大学の価値を取り込むようになってきた(図1)。大学とは研究開発のみならず、経営から人材育成など幅広く協業できる。

図1 企業にとって大学の果たす役割が拡大
主に大企業のオープンイノベーションに向けた活動をパナソニックなどの資料を参考に事業化時期と投資金額で大まかに示した。大学との連携が、従来の共同研究から、事業に近い領域での協業に広がっている。企業が投じる費用が100億円規模の例が出てきた。企業が特に新事業創出のために大学のリソース(研究者と知見)を必要とし始めていることに加え、大学が資金を求めて産業界に近づこうとしていることによる。
[画像のクリックで拡大表示]

 企業にとっても大学はいっそう重要な存在になりつつある(別掲記事参照)。AI(人工知能)など、自社の専業領域以外の知識や人材が必要になってきているためだ。社内の蓄積だけでは賄えない。加えて事業や研究開発の環境変化が激しさを増している。「設備投資よりも知的な財産から収益を上げる時代に入った」(大学の研究者)。基礎研究の成果がそのまま事業につながる「リニアモデルは崩れた」(東京大学の福田氏)。事業につながるニーズの創出を大学と共同で進めたいと考える企業が増えてきた。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経エレクトロニクス」定期購読者もログインしてお読みいただけます。今なら有料会員(月額プラン)が2020年1月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら