アシストスーツをより使いやすくなるよう改善していくと、そのまま人間のサイボーグ化につながっていく。中でもカギとなる技術が「人間のデータ化」だ。センサーで取得した生体情報や動きのデータを使うことで、パワーに頼らずとも人間を“超人"にできるとする研究も出てきた。現状のアシストスーツとサイボーグ化を支える技術と課題を紹介する。

 アシストスーツは技術的に発展途上だ。さらなる発展へのカギとなる技術は3つある(図1)。(1)パワーを生み出すアクチュエーター、(2)制御方法または人とのインターフェース、(3)データ活用である。最近これらにはブレークスルーが相次いでいる。

図1 要素技術だけではなく取得したデータの活用が重要に
アシストスーツのカギとなる3つの要素技術と、それぞれの現在の課題を示した。アクチュエーターや制御方法、人とのインターフェースだけではなく、アシストスーツから取得したデータの活用方法が重要になるとみられる。
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駆動部はモーターと人工筋肉の2択

 現状、(1)のアクチュエーターとして使用されているのは、モーターか人工筋肉のどちらかが多い。モーターの場合、小型化とトルクの増強がトレードオフの関係にあり、電池などの電源の小型軽量化も必要になる。制御の精度や応答性がまだ低いため、なめらかな動作に課題があり、技術革新が必要だ。

 現在、人工筋肉には2つのタイプがある(図2)。供給した空気で素材を伸縮させる空気圧タイプ(パッシブタイプ)と、電気で伸縮を制御するタイプ(アクティブタイプ)だ。現在使用されている人工筋肉の多くはパッシブタイプで、しかもMcKibben(マッキベン)型と呼ぶ形状である注1)

(a)空気圧式McKibben型人工筋肉の仕組み
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(b)イノフィスの空気圧式人工筋肉
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(c)Columbia Universityの研究者が開発した人工筋肉
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(d)(c)を用いたMcKibben型人工筋肉を人体骨格の腕に取り付けて動作させた例
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図2 電気制御可能なアクティブタイプの人工筋肉も登場
空気圧で制御するパッシブタイプ、電気制御可能なアクティブタイプの人工筋肉を示した。現在使われている人工筋肉の多くはMcKibben型と呼ばれる、ゴムチューブを筒状のナイロンで覆って端を閉じたタイプである(a)。外部から空気を供給するとゴムチューブが径方向に膨張し、ナイロン部分が軸方向に収縮する。イノフィスのマッスルスーツでは、初期はコンプレッサーを使用していたが、現在はあらかじめ手動ポンプで空気を送り込む方式を用いている(b)。アシスト力を変えるには手動で空気を入れたり抜いたりする必要がある。Columbia Universityの研究者は、数Vの低電圧で生体の筋肉の15倍の力を出せる人工筋肉を開発した(c)。この人工筋肉をMcKibben型人工筋肉(a)内部のゴムチューブと置き換えれば、動作を電気制御できるようになる(d)。(写真:(c)(d)はAslan Miriyev/Columbia Engineering)
McKibben型=ゴムチューブを筒状のナイロンなど非伸縮性樹脂シートで覆って端を閉じた形状。ゴムチューブが径方向に膨張するとナイロン部分が長さ方向に収縮して力を発揮する。
注1)アシストスーツでの採用例は、イノフィスの「マッスルスーツ」シリーズで、すべて空気圧タイプだ。電源は不要だが電気制御できず、細かい調整が困難である。高出力化するには外部にコンプレッサーが必要で、チューブでつながれるため移動しながら使えない。初期のマッスルスーツはコンプレッサーを利用していたが、後に手動ポンプで空気を送り込む方式に切り替えた。

 一方、電気制御可能なアクティブタイプの人工筋肉はまだ開発途上だ。米Columbia Universityの研究者は、数Vの低電圧で生体の筋肉の15倍の力を出せる人工筋肉を開発した注2)。素材に電気を流して熱膨張などで伸縮させる。McKibben型人工筋肉内部のゴムチューブをこの人工筋肉に置き換えれば、動作を電気制御できるようになる。しかし、パワーは充分に高いが応答性が低い。現状ではゆっくりとしか伸縮できない。

注2)人工筋肉の材料は、シリコーンゴム中にエタノールの微細な液胞、またはエタノールを含む微細な気泡を分散させたものだとする。形状は3Dプリンターで成型でき、電熱線を通して電気を流すだけで、そのジュール熱によって熱膨張する。具体的には、この人工筋肉に8Vの直流電流を流して約80℃にまで加熱すると、900%(約10倍)の長さに伸びるとする。自重の1000倍の重りを持ち上げられるという。

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