約20年前からある、作業支援や歩行支援に使われてきた「アシストスーツ」の市場が急速に拡大している。そのアシスト機能も大幅に高まりつつあり、一部製品は、着るだけで人間を「サイボーグ」にするまでに進化した。こうしたアシストスーツの第2形態、さらにはその先の製品が、今後10年ほどの間に我々の仕事や生活を大きく変えていきそうだ。

 「我々は人間と機械のハイブリット化が目標だ」(パナソニック子会社ATOUN代表取締役社長の藤本弘道氏)ー。こうした話が真顔で語られるようになる程、これまでSFの世界の話でしかなかった、人間の「サイボーグ化」が現実味を帯びてきた。サイボーグとは、人間の体とロボット技術を融合させて、生身の人間では発揮できない能力を手に入れた“超人”を指す。しかしこれまでは実現困難だった。人体を改造する技術やインプラント技術などのいわゆる侵襲手術は、技術的にも倫理的にも課題が山積みしているからである。

 最近になって、これらの課題をうまく回避する技術が登場し、しかも製品が実用化された。製品はいわゆる「アシストスーツ」の一種である。アシストスーツは、重い物を持ち上げる負荷を軽減したり、歩行を支援したりする機械装置。近年、その一部製品が人体との融合度を高め、インプラント手術をすることなく、体の上から装着するだけで自分の体の一部のように動作するようになってきた。まさに着るだけでサイボーグになれるデバイスなのである。

この1年でアシストスーツ市場が急拡大

 その前身、“第1形態”ともいえるアシストスーツの開発は約20年前から進められてきたが、実用化では苦戦してきた。ただ、この1年ほどの間に急速に利用が拡大している(図1)。

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図1 広がる活用事例、用途は多岐にわたる
(1)~(6)はATOUN製「MODEL Y」の使用例。JALグランドサービスにおける手荷物の運搬・積み込み作業(1)、浜田化学における肉脂を容器から取り出す作業(2)、アサヒ飲料における液体の運搬・調合作業(3)、南都銀行における硬貨の運搬作業(4)と同社倉庫での文書管理ダンボール運搬作業(5)、九建における工事現場での重量物運搬作業(6)。(7)~(10)はサイバーダイン製「HAL 腰タイプ 作業支援用」の使用例。大和ハウス工業における重量物運搬作業(7)、代理店も務める同社が紹介する被介護者を抱き起こす様子(8)、東京空港交通におけるリムジンバスに手荷物を運搬・積み込みする作業(9)、全日本空輸(ANA)における手荷物の運搬・積み込み作業(10)。(11)~(13)はイノフィス製「マッスルスーツ」シリーズの使用例。同社が紹介する被介護者を抱き起こす様子(11)、農業で中腰姿勢での作業(12)、建築現場で重量物運搬作業(13)。ダイドー製「TASK AR1.0」(Ekso Bionics製「Ekso Vest」を日本向けに改良)を用いた積水ハウスでの腕を支えながら天井の石膏ボード張り作業(14)。Laevo製「Laevo exoskeleton」での重量物運搬作業(15)。Noonee製「Chairless Chair」を用いた中腰姿勢での作業(16)。ニットー製「archelis」に立ち姿勢のまま“座って”手術している様子(17)。ジェイテクト製「J-PAS」を使用した同社工場での重量物運搬作業(18)。German Bionic Systems製「Cray X」での重量物運搬作業(19)と同「Cray +」での災害復旧作業(20)。Seismic製「パワード・クロージング」(21)。ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発するロボット義足「SHOEBILL」を装着した乙武洋匡氏(22)。早稲田大学 教授の岩田氏ら開発の「第3の腕」を用いてベニヤ板を支えながらビス止め作業(23)。スケルトニクス製「SKELETONICS ARRIVE」に乗り込んでパフォーマンスしている様子(24)。人機一体製の大型ロボット「MMSEBattroid」を遠隔操作している様子(25)。(写真:(2)~(6)と(11)~(22)(24)は各開発元が提供、(7)(8)(10)は各ユーザー企業が提供)

 アシストスーツを使うのに向いている作業は、重量物を移動させる繰り返し作業や、長時間中腰姿勢を維持する作業などだ。例えば、ATOUNが開発した「MODEL Y」を、2020年の東京五輪・パラリンピックでスタッフが使用する。同社は、その台数を20台以上とする。主な用途は、パラリンピックのパワーリフティング競技で重りを交換するサポート作業だ。重りを変えながら記録を伸ばしていく大会ルールのため、スタッフは1日に何百回も重りを付け替える必要がある。

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