無線を扱う前に技術者が知っておくべき基本を3回の連載で解説する。前回は電波について、さまざまな解析方法で考えてみた。今回は、アンテナと伝送線路について説明する。ポイントになるのがグラウンドの扱いである。これを理解すると、アンテナ設計や雑音対策のコツを身に付けることができる。 (本誌)

 今回は、アンテナと伝送線路について解説する。特に重要なのがグラウンドの理解である。グラウンドの本質が分かるようになると、アンテナ設計や雑音(ノイズ)対策のコツが見えてくる。

アンテナの基本を押さえる

 電波(電磁波)を放射するアンテナ、そのアンテナに高周波電流を供給する給電線(以下、伝送線路と記す)、配線からの雑音の発生・対策を理解する前に知っておきたい基本は、「アンペールの法則」である(図1)。電線に電流が流れるとき、電線を軸として、磁界は電線の周りをくるくる右回転するように発生する。発生する磁界の強さは、電線を流れる電流の大きさに比例する。この法則を基に、アンテナと伝送線路について考えていく。

図1 アンペールの法則
(出所:アンプレット通信研究所)
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 アンテナと伝送線路には、いろいろな提案や事例があるが、ここでは2本の電線を用いた伝送線路である平行2線と、その平行2線を開いて一直線状に延ばしたダイポールアンテナを例に説明する。いずれも2本の電線に高周波電流(以下、電流と記す)を流すが、伝送線路は電線が発生する磁界(電磁波)の放射を抑えるように機能し、アンテナは電流により電磁波の放射を起こさせる(図2)。

図2 アンテナと伝送線路の回路モデル
(出所:アンプレット通信研究所)
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 ここで、電磁波の放射が起こるか起こらないかは、電線に電流が流れると右回転で磁界が発生するアンペールの法則から考えることができる。磁界が発生すると、そこから電磁波が放射される。電磁波を放射したくない場所では、電流が流れても磁界が発生しないように工夫すればよい。

 図2のモデル図には、無線通信システムの信号源(送信機)、平行2線伝送線路、ダイポールアンテナを示している。信号源は平衡電圧(同相と逆相の差動電圧)を出力する。

 この信号源から出力される平衡電圧を、平行な2本の電線から成る伝送線路に給電するとどうなるか。

 例えば上側の電線に正(+)の電圧、下側の電線に負(-)の電圧が印加されると、上側の電線には左から右に電流が流れるとすれば、下側の電線にはその逆向きの右から左に電流が流れる。アンペールの法則によって、上側の電線に流れる電流によって発生する磁界と、下側の電線に流れる電流によって発生する磁界は、その回転方向が真逆になる。従って、磁界の発生が相殺され、結果として電磁波の放射は起こらない。これが伝送線路の基本的な動作である。

 それでは、伝送線路からつながるアンテナは、どうやって電磁波を放射させているのか。伝送線路の平行な2本の電線の右端を、図2のアンテナの領域で示すように、直角にそれぞれ逆方向に曲げ、一直線状にする。このアンテナの領域の上側にある電線に注目すると、伝送線路の領域では左から右に電流が流れ、アンテナの領域では下から上に向かって電流が流れる。一方、下側の電線では、伝送線路の領域で右から左に電流が流れることから、アンテナの領域では電流は下から上に向かって流れる。

 従って、アンテナの領域にある一直線上の2本の電線に流れる電流は、上側も下側も、下から上に向かって流れているので、これらが発生する磁界の回転方向が一致し、電磁波の放射が起こる。これがアンテナの基本的な動作である。

 電流の流れとアンペールの法則を考えれば、電磁波を放射するアンテナなのか、放射しない伝送線路なのかが見えてくる。

 アンテナの長さは、アンテナに供給する高周波信号の周波数により決まる波長の1/2にするのが基本である。1/2波長の長さにすると、そのアンテナは高周波信号の周波数に共振し、電磁波が強く放射される。アンテナ設計における放射素子の基本形は、ダイポールアンテナと呼ばれる1/2波長の長さの電線(アンテナのエレメントという)になる。

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