現在ある燃料電池(FC)のほとんどは充電できない1次電池である。それでも、外から燃料、つまり水素などを充填できるため、使い捨てにはならない。

 ただ、原理的には2次電池化は可能である。特に、発電、すなわち放電時に使う固体高分子形燃料電池(PEFC)と、水電解、すなわち充電に使うPEM型水電解装置は電極や装置の構造はほとんど同じ。化学反応はちょうど反対だ。異なるのは、最適な触媒材料の選択やその量ぐらいである。第2部で紹介した東芝の自立型エネルギー供給システム「H2One」は、コンテナの中にPEFCとPEM型水電解装置、そして水素の貯蔵システムなどを同居させている。ある意味、コンテナ全体で2次電池のように機能するのである。

研究者が「発電機」に思い入れ

 仮に、FCを2次電池化すると名前は、「水素-空気2次電池」と呼ばれるはずだ。亜鉛(Zn)-空気電池やリチウム(Li)-空気電池など、似た反応系を備えた電池で、技術的には容易ではないにもかかわらず、2次電池にする研究開発に取り組んでいる研究者が多くいる中で、FCの2次電池化を目指す研究者が少ないのは不思議なぐらいである。

 理由の1つは、FCを開発している研究者の多くが、FCを他の電池と同様な「電気化学電池」ではなく「発電機」だとみなしていることだろう。発電機なら燃料は外から入れるもので、外部の電力を使った充電によって“灰”を還元して再利用するものではないわけだ。外から入れる燃料と電力を全く違うものだとみなしているのである。FCの研究者の中には、「2次電池にする意味やメリットが分からない」と回答する人もいた。

企業で10年以上も開発

 ただし、研究者は少ないものの、いるにはいる。そうした研究者は2次電池型のFCを「リバーシブルFC」「可逆セル」などと呼んでいる。水素と酸素から放電(発電)によって生成した水を、今度は充電によって水分解して水素と酸素に戻るという可逆性が生まれるからだ。現在リバーシブルFCを開発する企業や研究機関のグループの1つが、高砂熱学工業と産業技術総合研究所である。特に高砂熱学工業は2000年代半ばに開発を始め、今も「研究開発は続けている」(同社)という。現在、試作した可逆セルを産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究センターに設置し利用中だ(図A-1)。

(a)太陽光発電の余剰時に電力を水素に変換
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(b)太陽光発電と水素吸蔵合金の設備((a)とは別)
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(c)PEFCタイプの可逆セルの2つの課題
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図A-1 同じ燃料電池セルを発電にも水分解にも利用
産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究センターで稼働中の、水電解燃料電池一体型セルとその周辺システム(a)。太陽光発電が電力系統にとって余剰気味になると、系統連係から水電解に切り替え、水素を製造してタンクに貯蔵する。一方、電力系統の電力が不足気味の時は、貯蔵した水素を燃料電池で使って発電し、系統に連係する。これとは独立に水素吸蔵合金の研究もしている(b)。利用時の課題の1つは、水電解と燃料電池のモード切り替えに時間がかかる点で、10~30分程度かかるという(c)。(図:(a)は産業技術総合研究所の資料を基に本誌が作成)

 開発の理由は、1つのセルで発電と水電解を切り替えて使うことで、FCと水電解装置を並べるよりも省スペースになり、装置コストも軽減するからだという。具体的には、日照条件がよく、太陽光発電システムが発電する電力が電力系統にとって余剰気味の場合は、その電力を使って可逆セルを水電解装置として利用する。製造した水素は水素吸蔵合金タンクなどに貯蔵する。2019年1月末に東京でFCVに充填された水素は、まさにこのようにして製造されたものだという。

 一方、電力系統の電力が不足気味の場合は、可逆セルをFCとして用いて、貯蔵した水素を使って発電する。このように機能を切り替えて使うのは極めて合理的だろう。電池以外では、冷房と暖房をエアコン1台で、時間ごとに切り替えて運転するのに似ている。

 逆に、仮にこれらの装置を2つの装置に分けても、それらの機能を同時に使う利用シーンはやや考えにくい。電力を使いながら発電することになるからだ。損失も大きい。強いて言えば、電力系統の出力変動を平準化する周波数フィルターのような役割ではあり得る。

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