電力を非接触、つまりワイヤレスでEVに給電し、電池を充電する「ワイヤレス給電(WPT)」技術のEVにおける実用化が目前になってきた。この技術が普及すれば、これまで事実上、ケーブル充電に縛られていたEVが大きく変わる可能性がある。自動運転との親和性も高く、未来につながる技術といえる。

 電力を非接触でEVに給電する「ワイヤレス給電(WPT)」による車載電池への充電は、容量の増大と充電レートの高出力化という悪循環からEVを脱却させる可能性が高い。

 EV向けWPTでは、路面に埋め込んだ送電コイルから、車両の底に設置した受電コイルに電磁誘導の応用技術「磁界共鳴結合方式」で電力を給電1)。次にその電力を車載電池などに充電する(図1)。

磁界共鳴結合方式(Magnetic Resonance Coupling)=一般的な電磁誘導との違いは、送電コイル、受電コイルそれぞれの等価回路がLC共振回路となるよう設計した上で、それらの共振周波数と同じ交流周波数で電力を送る点である。負荷を接続しない場合、電力は2つのコイル間を往復することになる。一般的な電磁誘導コイルに比べて、コイル間の距離や向きに対する許容度が大幅に高いことが利用の際のメリットとなる。
 主に非線形光学の研究者であるマサチューセッツ工科大学(MIT) ProfessorのMarin Soljacic氏が自然界に広く存在する共鳴現象にヒントを得て、磁界共鳴結合方式を電界共鳴結合方式と共に2006年に提唱。2007年7月には磁界共鳴結合方式で2m離れたコイル間を磁界で結合させ、60Wの電球を点灯させた論文を学術誌「Science」に発表した。それまでにもほぼ同じ回路構成を取る技術はいくつもあったが、電磁誘導のコイル間は近接させなければならないという“常識”にとらわれ、コイル間を大幅に離しても比較的高い効率で電力を送ることができる点に気づいた研究者はほとんどいなかった。
(a)「PHEV、EVには非接触充電が欲しい」とトヨタ
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(b)ケーブル充電に対するWPTのメリットと課題
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図1 期待の大きいEV向けワイヤレス給電(WPT)
EV向けWPTシステムの概要(a)とケーブル充電に対するメリットと課題(b)。トヨタの元理事である石黒恭生氏は、「WPTをぜひともやりたい!」と2018年10月の講演で力強くアピールした(a)。(図:(a)は石黒氏の講演資料)

 ケーブル充電とWPTの大きな違いは、(1)運転手が車外に出て作業する必要がなく、必要な位置への運転操作だけで済む、(2)送電側のシステムを駐車場や道路の路面に埋め込めるため充電可能な場所が大幅に広がる、(3)自動運転との親和性が高い、の3つだ。

 (1)や(2)は、運転手などに負担をかけずに充電回数を大幅に増やせる可能性につながる。すると、大容量の電池の必要性が減り、車両が軽量化するとともに、車両の価格も低減できる。それまでの悪循環が逆回転して好循環になるわけだ。(3)は、自動運転の導入が容易になるだけではなく、WPT自体の使い勝手を高める上でもプラスに働く。駐車する際のWPTシステムと車両の位置合わせを自動化すれば、運転手の駐車テクニックの巧拙は無関係になるからだ。

 自動車会社の多くにとっても、WPTはのどから手がでるほど実現したい技術になっている。実際、トヨタ自動車の元理事である石黒恭生氏は2018年10月の講演会で、トヨタが2014年から日米欧での実証実験を開始したことに触れながら、「PHEV、EVには非接触充電が欲しい」とストレートに訴えた(図1)。

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