赤外線カメラ市場では、画素数を数千に抑えた低コスト品が新しい応用分野をつかんで需要を拡大している。今回、こうした低コスト品を中心に、応用動向を紹介する。スマートフォンと組み合わせて熱画像を撮れるコンシューマー市場向け製品や、活発な開発を続けて欧米に迫る存在感を示す中国メーカーの動きについても触れる。 (本誌)

 赤外線カメラの市場動向を解説する。市場での存在感を高める中国など世界市場の動きについて概説した後、市場の拡大傾向が顕著な小規模センサーアレー、さらに期待が大きいスマートフォン向けを紹介していく。

車載とスマホ向けの市場に期待

 今回は赤外線カメラ(今回の連載で対象としている冷却が不要な機器)の市場規模は、2018年時点で年間約100万台である。今後も市場は成長する見込みで、複数の調査会社が2020年代前半に数百万台規模に拡大するとの予測を示している。

 牽引役は、車載向けと、スマートフォン向けをはじめとする少画素品である。後者には、特に欧州でスマートビルディングと呼ばれる応用への期待が大きい。省エネルギー化のためのセンサーとして赤外線カメラを使う。以前からの応用の防災セキュリティーや保守・保全は、成長率は高くないものの規模は比較的大きい。高性能で高価なレンズを使うために高単価の製品が多い。

 世界市場では欧州の規模が大きく、日本は極端に少ない。メーカー別では、米FLIR SystemsやスウェーデンVeoneer(旧スウェーデンAutoliv、同社がエレクトロニクス事業子会社として2018年に設立)など欧米企業が多い。

 ここ数年で、中国メーカーがシェアを拡大し存在感が増している。Wuhan Guide Infrared(Guide Infrared)などがある(表1)。日本メーカーでは、日本アビオニクス、チノー、ビジョンセンシングなどが知られている。

表1 中国の赤外線イメージセンサーとカメラのメーカー、関連研究機関の例(表:筆者)
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 赤外線カメラの主要部材である赤外線イメージセンサー市場では、FLIR Systemsのシェアが非常に大きく、フランスULIS、米DRS Technologiesが続く。

 赤外線カメラの価格については、市場拡大に伴って低下を続けている。例えば、これまで高級車に搭載されていた車載用は、今や価格は500米ドルほどになっている。2022年には200米ドルになるとの見方がある。

中国メーカーが欧米勢の中で存在感

 拡大基調の市場にあって存在感を増しているのが中国メーカーだ。中国には、画素ピッチで20µmや17µmの赤外線イメージセンサーのVGA(640×480画素)品を製造できるメーカーが複数ある(表1)。

 そのうちの1社が前述のGuide Infraredである。同社は、1999年の創立で、約600人の研究開発者を含めて1500人ほどの従業員を抱えている。ほぼフルラインアップでカメラを製品化しているとともに、カメラモジュールも提供している。

 他にも中国メーカーが数多くあり、例えば2006年創業のNorth Guangwei Technology(GWIC)はセンサーを自社開発しており、クリーンルームを持っている。Guangzhou SAT Infrared Technology(SATIR)は、ULISのアモルファスSi非冷却赤外線イメージセンサーを使ったVGAまでの解像度のカメラを製造・販売している。日本市場でも積極的に販売中である。

 Guide Infrared、SATIR、Magnity Electronics、Ulirvisionは車載用赤外線ナイトビジョンシステムを販売中である。Magnity Electronics は、本連載の第3回で紹介したバイマテリアルのセンサーを自社開発し、これを使った80×60画素のカメラを製品化している。

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