日本電産を一代でプレハブ小屋の工場からグローバル企業に育て上げ、カリスマ経営者とも言われる同社 代表取締役会長の永守重信氏。同氏が持つ、もう一つの肩書が「永守学園 京都先端科学大学 理事長」。2018年3月に京都学園大学を運営する京都学園(現・永守学園)の理事長に就任し、それと入れ替わる形で同年6月に日本電産の社長職を離れた。なぜ今大学なのか。永守氏に聞いた。(聞き手は大石 基之=日経 xTECH 編集長、宇野 麻由子=日経 xTECH)

(写真:大亀 京助)
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なぜ、私財をなげうって「大学」なのでしょうか?

 今まで、私は企業の経営者として採用側にいました。日本電産でも、創業してから7500人ぐらいの大学卒業者を採用してきましたが、この“大学卒業者"に疑問を感じたんです。

 まず、何も知らない。例えば、経済学部を卒業しているのに決算書が読めない。中には簿記も分からないという人もいる。経営学部を卒業していても、経営の「ケ」も分からない。さらに英語は話せない。

 もっと強調したいのは、常識を知らないということ。上座・下座に始まり、マナーが全然分かっていない。雑談力もない。海外に行くと言われるんですよ、「日本人と一緒に食事するのは嫌だ。ガツガツ食べるだけで、話もしないから」と。それは英会話ができないということに加えて、ジョークを言ったりするスキルがないということです。日本では国会からして全部原稿を読んでいる。そういった教育しか受けていないわけです。

 そこで「一流大学と三流大学はどう違うのか」と考えてみました。そしてデータを何十年も取ってみたんです。そして出た最後の結論は「何も変わらない」ということ。結局、今の大学進学教育が間違っている、暗記とテクニックしかやっていない、という考えに至りました。

 総合的に見れば、「玉露のカスより番茶の上」。これが結論です。偏差値教育とブランド教育が間違っているということですよ。だからそれを打破しようと考えました。ただしイチから大学を作ろうとすると参入障壁が高く、10年くらいかかってしまう。するとたまたま、前任の理事長から「この先の少子化を見据えると、このままの延長線上に明るい将来はない。永守さんが来て、新しい将来性のある大学にしてくれないか」と打診され、それならば私が協力しようということになりました。学部も充実させて、工学部も2020年4月に新設予定です。

 本当は「工学部モーター学科」を新設したいと考えました。ところが「モーター学科」とすると、モーターに関する論文を書いて博士号を持つ人しか教授になれない。そういう人材がいないから、この大学を作っているんですよ。

 「モーター研究者が足りない」という危機感は以前から持っていました。今後クルマのEV化はどんどん進んでいく。ロボットやドローンもモーターが欠かせません。「モーターが産業の米」になる時代が来ているというときに、日本のどこにもモーター学科がないんです。

 地元の京都大学にもモーター学科はありません。以前になくなりました。山極壽一総長に「(モーター学科を)作ってもらえないと困る」と言ったら、学科の新設は簡単にはできないと言う。そこで「分かりました。簡単にできる方法はないでしょうか」と尋ねると寄付講座を提案されたので、実際にやりましたよ。来年はその講座から初の卒業生が出ます。

 それから2014年に永守財団を作り、研究開発活動を顕彰したり、モーターの研究費を助成したりしてきました。今年で5回目になります。ここで研究者の世界のネットワークができあがった。次のような仕組みです。助教や准教授といった若い研究者は資金がない。そういう人に300万円くらいの研究助成金を出します。多くの研究者がこぞって応募してきますから、海外を含めてどこの大学にモーター研究者がいるのか、分かります。その研究者が准教授になり、教授になってさらに弟子が出てくる。このネットワークを活用するのです。そして大学の工学部新設につなげていった。実は計画的に流れを作りました。

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