ソニーが研究開発で新体制を構築した。同社はこの数年間にわたる財務基盤強化の取り組みにより、2期連続の最高益を見込むなど、好調な業績が続いている。足場は固まった。では、ソニーは5年後、10年後に向かって成長する企業になれるのか。その鍵を握るのは研究開発だ。同社の「R&Dセンター」のトップである勝本徹氏に話を聞いた。(聞き手は田中 直樹=日経 xTECH 副編集長、内山 育海=日経 xTECH)

勝本 徹(かつもと・とおる)
1957年生まれ。1982年、ソニー入社。米カリフォルニア工科大学留学やSony United Kingdom赴任の後、デジタル一眼カメラの開発や医療合弁会社の設立などを手掛け、2017年4月、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ 代表取締役副社長に就任(現職)。2018年6月に執行役 常務、R&D、メディカル事業担当(現職)。同年7月にR&Dセンター長(現職)。2019年2月、コーポレートテクノロジー戦略部門長に就任(現職)。(写真:加藤 康)
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ソニーのR&Dセンターは今後、何を目指すのか。

 2018年4月に、R&Dセンターに改変される前の「R&Dプラットフォーム」の担当に着任した時、吉田憲一郎社長をはじめとする経営陣から頼まれたことが3つある。

 第1は、R&D部門が培ってきた技術を会社全体にもっと活用してほしいということ。これまでのソニーのR&Dは、テレビやカメラといった一般消費者(コンシューマー)向け商品に搭載する新機能の開発や、イメージセンサーなどの半導体分野における次世代技術の研究開発が中心だった。今後は、プロフェッショナル用途の製品やエンターテインメント事業にも技術を活用してほしいと頼まれた。

 エンターテインメント事業には、映画や音楽、ゲーム、ライブなどの事業がある。それらの事業を、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントと、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ゲーム機「プレイステーション」を扱うソニー・インタラクティブエンタテインメントが担う。エンターテインメントではないが、日本には金融もある。銀行や生命保険、損害保険、さらには介護まで手掛けている。このような分野にも、R&D部門の技術を活用してほしいと言われた。

 第2は、5年先、10年先のための仕込みのウエイトをどんどん増やしていってほしいということ。この4~5年は会社の財務状況が厳しかったので、直近の売り上げに寄与することに集中していた。足元でしっかりと稼げるまで業績を回復させた上で、中・長期の手を打とうという考えだった。R&D部門としても、来年や再来年の製品に貢献することを重点的に取り組んできた。その結果、商品力が強くなってきている。そこで、ちょうど私が担当になる時期に最高益を出したこともあり、次のステップとして5年先、10年先の仕込みを頼まれたのである。

 第3は、5年先、10年先の仕込みを、社内だけではなく、社外の大学や研究機関、会社などとオープンコラボレーションしながら、いわゆるオープンイノベーション的な方法をもっと活用しながら進めてほしいということ。中・長期の仕込みをするときには、「何かしら大きな塊で大きな仕込みをしてほしい」という考えがこの依頼の背景にある。

ミッションを実現するために、どのような運営体制を敷くのか。

 2018年4月、R&Dプラットフォーム担当に着任してすぐに、ソフトウエアを中心としたシステム開発を手掛ける東京・大崎の研究開発本部と、材料とデバイスを開発する神奈川県・厚木の研究開発本部を1つにまとめ、「R&Dセンター」という形にすべく動き出した。大崎と厚木の研究開発本部は、場所が離れていることもあり、これまで交流しにくい面があった。

 大崎と厚木の研究開発本部は、要素技術別に個々の部門に分かれていた。そこで、各部門の研究開発内容を見て、システムか材料・デバイスかという従来の観点ではなく、研究開発の息の長さや顧客からの距離によって各部門を3つのレイヤーに分類し、組織を再編した。

 具体的には、次の3つのレイヤーである。

  • [1]技術探索や基礎的な息の長い研究を積み重ねて5~10年かけてものにしていくような基盤技術に取り組むレイヤー
  • [2]それらを組み合わせてプラットフォームやシステムを構築するレイヤー
  • [3]ビジネスや応用に近い統合技術に取り組むレイヤー

 これらのレイヤーを、我々は「フィールド」と呼んでいる。これら3つのフィールドに、大崎と厚木の各部門を配置していった。こうした体制の中で、プロジェクトを走らせていく。プロジェクトでは、3つのフィールドを縦方向に貫く形でいろいろなメンバーが集まって進めていく。

どんなプロジェクトが走っているのか。

 さまざまなプロジェクトを動かしている。例えば、ソニー・ピクチャーズと一緒に、バーチャル技術を活用して映画やテレビドラマを撮る技術を開発している。ソニー・ミュージックとは、ライブでどのような技術が使えるかを研究している。

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