官公庁や業界団体が毎年出す出版物の1つに「白書」(ホワイトペーパー)があります。今年は「令和初」となるだけに、例年に比べても力の入った白書が散見されます。その1つが総務省の「情報通信白書」。同白書で今回も編集委員を務めた方がご自身のFacebookにて「いつもは『せめて概要を』と勧めていますが、今年は本編をじっくりお読み下さい」といった趣旨の投稿をされていました。それに吸引されるかのごとく、いつもならポイント、概要と読み始めるところを、いきなり本編から読んでみました。同白書は総務省のWebサイトからダウンロードして読むことができます。

 今年の情報通信白書には「令和元年ならでは」と思える読みどころが大きく2つありました。

 1つは平成の情報通信30年間を振り返った本編の第1部第1章「ICTとデジタル経済はどのように進化してきたのか」です。同章には「ICT関連製造業は、昭和時代の『電子立国』から平成時代に大きく縮小」という項目があります。ここには、以前に本誌編集長を務めていた技術ジャーナリストの西村吉雄氏の分析・見解が引用されています。その結びに「4つの圧力に日本企業は対応せず、伝統的垂直統合と自前主義に立てこもった。これこそが衰退原因の本質」とあります。この指摘は令和の時代でも真摯に向き合う必要があると改めて感じました(4つの圧力が何かについては同白書の本編をお読みください)。

 もう1つは同部第2章「Society 5.0が真価を発揮するために何が必要か」の最後にある「人間の『拡張』」という項目です。それまでの項目が「デジタルトランスフォーメーション」や「オープンイノベーション」ですから、かなり踏み込んだ印象を抱きます。同白書ではICTによる人間の拡張を「身体」「存在」「感覚」「認知」の4つの方向性に整理・紹介しています。このうち「身体」について本誌は、6月号の特集「着るだけでサイボーグ 」にまとめました。他の方向性でも研究開発が加速しつつあり、まるでSFの未来社会で描かれたような成果が出始めています。追って取り上げていく予定です。

出典:日経エレクトロニクス、2019年9月号 p.9
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