「くるまにイーサネット(Ethernet)」をテーマにした日経エレクトロニクス/日経Automotive主催イベント「採用広がる車載Ethernet、自動運転やコネクテッドの要」(2019年6月5~6日、大阪市)に参加し、“車載ネットワーク漬け”の2日間を満喫しました。特に興味深かったのが、IEEE 802.3による標準規格の動向です。現在ホットなのが「10BASE-T1S」。頭の数字から推測できるように伝送速度が10Mビット/秒の規格です。早ければ今年の9月に規格化完了とのことでした。

 今や「10Mイーサ」と言えば、オフィスや家庭ではすっかり見ることがなくなりましたから、隔世の感を禁じ得ません。また、10BASE-T1Sで検討されているアーキテクチャーやメディアアクセス制御には、“イエローケーブル”の「10BASE5」を彷彿させるバス型の「マルチドロップ」や、トークンリングや100VG-AnylLANの得意ワザ(トークンパッシングやデマンドプライオリティー)を想起させる衝突回避技術の「PLCA」(Physical Layer Collision Avoidance)などがあり、聞いていると30年近く前のIEEE 802.3委員会の議論が頭の中によみがえってきました。車載ネットワークという新たなフィールドでEthernetが再定義されようとしていることを実感しました。

 振り返れば、オフィスや家庭にLANが普及するきっかけは1990年に規格化された「10BASE-T」の製品化だったといえます。その後のEthernetは絶え間ない高速大容量化を続け、応用分野もLANを越えてWAN(広域ネットワーク)、SAN(ストレージエリアネットワーク)、データセンターと拡大の一途をたどりました。その過程で、あまたの競合技術を蹴散らし、特にLANでは唯一無二の存在として君臨しています。

 そして車載ネットワークに目を向けると、CAN、LIN、FlexRay、MOSTといった従来規格が根強く使われています。そこで新参者の10BASE-T1Sはどのようなポジションを獲得していくのか。今後も車載Ethernetの動向から目を離せません。

出典:日経エレクトロニクス、2019年7月号 p.7
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