高速大容量で長距離の通信システムと言えば、今も昔も光ファイバー通信です。通信を取り巻く環境が、電子メールやWebアクセスといったインターネットの常時接続から、スマートフォンをはじめとするモバイル端末の増大、動画などリッチコンテンツによる容量拡大へと変わっていくさまを、光ファイバー通信はいわば裏方として支えてきました。そしてこれからは、IoT(Internet of Things)による接続デバイス数の爆発的な増加と、5G(第5世代移動通信システム)による超高速通信や超低遅延通信の実現に向けて、光ファイバー通信はさらなる高速大容量・長距離化が求められます。

  その期待に応えるかのように、北米のOFC(Optical Networking and Communication Conference & Exhibition)や欧州のECOC(European Conference on Optical Communications)といった国際学会では毎年、特に優れた発表(Postdeadline Paper)に「世界最速」や「世界最長」といった文字が躍ります。まさに「光のオリンピック」と言えるでしょう。実際、2019年3月3~7日に米国サンディエゴで開催されたOFC 2019では、NTTが1波当たり1T(テラ)ビット/秒を超える伝送速度で、これを35波長多重して800km伝送する実験に世界で初めて成功したと発表しました。現在の実用システムでは1波当たりの伝送速度が100Gビット/秒ですから、10倍の性能向上を達成したことになります。5Gの伝送速度は4Gよりも1桁以上高速になるので、5Gの普及を支える技術の1つとして期待できそうです。

  研究開発ベースでは、光ファイバー1本当たりの伝送速度は10P(ペタ)ビット/秒を超えています(光ファイバー長は11.3km)。それを可能にしたのは、複数のコア(光信号の通り道)を使う空間多重伝送技術「マルチコア」です。そして、無線通信でおなじみの空間多重伝送技術「MIMO(Multiple Input Multiple Output)」を組み合わせる研究開発が活発になっています。これまで光通信と無線通信は、同じ電磁波でありながら独立して発展してきましたが、5Gの登場により融合が加速しそうです。

出典:日経エレクトロニクス、2019年4月号 p.9
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