NTTは毎年2月、同社の研究開発関連で最新の成果を披露する「R&Dフォーラム」を開催しています。前回は2月号の特集「“量子コンピューター”続々」で紹介した「コヒーレントイジングマシン」の展示が注目されました。今回は、自然界に放置しても土壌や生物に悪影響を与えない「土に還る電池(ツチニカエルでんち)」(日経 xTECHの記事)などが話題でした。

 個人的に興味を覚えたのが、自動車セキュリティーに関するデモです。「コネクティッドカーへのサイバー攻撃を検知します」と題する展示で、会場では2台のリモコンカーを使って、サイバー攻撃を検知した場合と検知できなかった場合の挙動の違いを見せていました。検知できなかった方のリモコンカーは、勝手に前進・後進を繰り返す、ライトが激しく点滅するなど、操縦者の意図に反した動きを強いられていました。

 このデモは、外部の攻撃者がコネクティッドカーの通信モジュールを入り口として車内に攻撃メッセージを送り込み、それが車載ネットワーク(CAN)を介して各機器にアタックをかけるといったケースを想定したものです。ここでNTTが見せていたのは、攻撃メッセージの中身や間隔が、通常の正しいCAN信号とは異なることを高精度に検出する技術です。同社の説明によれば、ITで培ったセキュリティー技術と機械学習技術を自動車向けに応用したとのことです。

 CANは代表的な車載ネットワークとしてよく使われていますが、セキュリティーの観点から見ると、認証や暗号の機能が強いとは言えません。実際、クルマへのサイバー攻撃として知られているJeep Cherokeeのケースが、CANを介したものでした。

 つながるクルマでサイバー攻撃に備えるためには、侵入を前提とした対策が必要となります。それには、1点集中でセキュリティー対策を施すのではなく、2重、3重の備えを施す「多層防御」が有効です。まさに今、ITで培われたセキュリティー対策が、自動車でも必要になってきているわけです。

 さらに言えば、ITのセキュリティー対策に学べる最大の点は、サイバー攻撃やセキュリティーの脆弱性が見つかった場合の速やかな報告と開示です。安全・安心を第1とする自動車業界なら、その重要性はなおさらでしょう。日経エレクトロニクス/日経 xTECHは今後、「自動車セキュリティー」に関する情報発信を強化していきます。

出典:日経エレクトロニクス、2018年4月号 p.9の「いざ自動車セキュリティーへ」を改題したものです
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