日立製作所やNECが「ロボットシステムインテグレーション(ロボットSI)」と呼ばれる事業に参入する。ロボットSIは従来、ユーザー企業の生産技術部門や、中小規模のロボットSI事業者が担うことが多かった。大手電機メーカーの攻勢によって、業界の構図が変わる可能性が出てきた。

 労働力不足や人件費高騰で、産業用ロボットの需要が右肩上がりで増えている。ただし、ロボットは買ってきただけですぐに動かせるものではない。所望の動作を登録する教示(ティーチング)や、周辺設備との同期の確保など、稼働させるための準備作業が必要となる。それらは「ロボットSI」(ロボットシステムインテグレーション)と呼ばれる。

 ここにきて、大手電機メーカーが相次いで産業用ロボットSI事業への参入を明らかにした。NECは、自社工場の活用ノウハウを注ぎ込んだパッケージサービスの提供を開始。日立製作所は日米でロボットSI事業者を買収し、一気に攻勢をかける。既存のロボットSI事業者のほとんどは中小企業であり、ロボットメーカー各社の実質的な“系列企業”であることも少なくない。そんな市場にNECや日立製作所のような大手電機メーカーが参入するのは、一見すると不可解に映るかもしれない。

 両社がロボットSI事業に参入するのは、労働力不足や人件費高騰で今後、産業用ロボットの需要が急速に増えるからだ。国際ロボット連盟(IFR)によれば、全世界における産業用ロボットの販売台数は、2017年に38万1000台だったが、2021年には63万台まで増える見込みだ。2021年までの年平均成長率(CAGR)は14%に達する(図1)。日立製作所はロボットSI市場について「2018年から2023年までのCAGRを10%超と想定している」と期待をかける。

図1 全世界での産業用ロボットの販売台数は増加基調
2017年までは実績値、2018年以降は予測値。(出所:国際ロボット連盟)
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「開発にリソースを集中」

 市場拡大だけではない。最大の変化は、これまで自前でロボットシステムを構築してきた自動車メーカーなどにおいて人的リソースが不足するようになり、外注が増えることだ。「自動車メーカーやティア1、2クラスの自動車部品メーカーからは、開発にエンジニアリングリソースを集中しなければ、本業で勝てない時代になってきたと聞いている」(日立製作所)。

 従来は、自動車メーカーなど大企業の主に生産技術部門がロボットシステムの企画・設計を手掛け、ロボットSI事業者はそれを忠実に構築するという関係だった。今後は、ロボットシステムを含めた生産ライン全体の企画・設計から担える「ラインビルダー」ともいうべきロボットSI事業者が求められる。必然的にプロジェクトの規模が拡大し、NECや日立製作所のような大手電機メーカーにとっても魅力的なビジネスになっていくというわけだ。

「データビジネス」を併せて展開

 ただし、ロボットSI事業の収益性はこれまで特に日本において必ずしも高くなかった。「労働集約的」「手離れが悪い」「顧客の設備投資動向に左右されやすい」といった構造上の課題を抱えているからだ。事業の「選択と集中」で利益率の改善を進めている両社にとって、同事業への参入はその足かせとなる恐れがある。

 そこで両社は、ロボットSI事業単体にとどまらず、ロボットの稼働データを活用した「データビジネス」を併せて展開する。具体的には、各社のIoT(Internet of Things)基盤に稼働データを取り込み、その分析結果に基づいた予知保全サービスやコンサルティングサービスなどで利益の確保を図る。

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