「中国メーカーが世界半導体産業のトップグループに入る」。こうした中国政府の目標に対して米政権は知的財産権保護と安全保障を盾に強硬策を取っている。大型買収を封じられた中国は、国を挙げて半導体企業を育成し、材料までオール国産化し始めた。日本企業はどう対処すべきか、台湾在住の記者が探った。 (本誌)

 「中国共産党は、米国企業から盗んだ技術で鋤(民生品)を剣(軍用品)へ大規模に転換している (中略) 我々は容赦しない。中国との関係が公正かつ互恵で我々の主権を尊重したものになるまでは」1)。米ペンス副大統領による2018年10月の演説は、“米中経済戦争”の宣戦布告となった。

 中国政府は、世界有数のシェアを持つ企業が育った太陽電池/LED/液晶パネル業界と同様に、半導体でも手を尽くしている。半導体企業は「外国企業の独占を打破する製品を開発した」と続々と宣言、川上から川下までの国産化にまい進し始めた。

中国のDRAM量産が頓挫

 2018年10月、米商務省は米国企業に対し、DRAMの量産を準備している中国JHICC(福建晋華)への輸出を禁じた(表1)。同社は米政府の言う「テロ支援国家」に輸出していなかったが、DRAMメーカーの米Micronが「JHICCが営業秘密を盗み知的財産権を侵害している」との主張を踏まえた。JHICCは、米国メーカーによる製造装置を欠きDRAMを量産できなくなった。

表1 半導体を中心とした米中経済戦争の経過
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 さらに同月、米政府は通信機器や監視カメラを手掛ける中国5社の排除を2019年版国防権限法で定めた。5社の製品を使う企業との取り引きを2020年8月に打ち切る内容だ。5社とはDahua(大華)、Hikvision(海康)、Huawei Technologies(華為)、Hytera(海能達)、ZTE(中興)である注1)

国防権限法=国防総省に予算を与えるため毎年制定される法律。経済制裁にも使われる。
注1)Huawei製品の使用を禁じる動きは米国のほか、オーストラリア、日本、英国の政府、台湾行政が運営する研究所などにある。それ故にHuaweiの納入メーカーは収益が減るかもしれない。2018年11月に公表した95社のコアサプライヤーリストには米国企業が34社、中国企業は28社、日本企業は11社、台湾企業は10社あった。SiファウンドリーではTSMCとSMICが含まれていた。

 そして12月には、HuaweiのCFOで創業者の娘のWanzhou(Sabrina) Meng(孟晩舟)氏をカナダ司法当局が逮捕。米司法当局は2019年1月に同氏を起訴した。Huaweiは傘下に中国最大のIC企業Hisilicon(海思)を持つ。同社は監視カメラASSP(特定用途向けIC)の世界トップシェアで、Huaweiのスマートフォン用ASIC(特定顧客向けIC)を設計している。Hisiliconのモデムやプロセッサーは米Qualcommと競合する注2)

注2)Huaweiは2019年1月、5G(第5世代移動通信システム)モデムIC「Balong(巴龍) 5000」を発表。6GHz未満の帯域におけるダウンロード速度は最高4.6Gビット/秒。ミリ波帯域のアップロード速度は最高2.5Gビット/秒。これらの速度はQualcommの「Snapdragon X50」の2倍という。

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