知財を所有し、独占することで、競合企業に差を付ける─。そんな従来の構図が揺らいでいる。変化を促しているのは、人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)だ。価値の源泉がAI/IoTへと移るのに伴い、知財に関しても「利用」や「共有」といった考え方の重要性が高まっている。

 機器メーカーにおける知財の在り方が変わろうとしている。従来、機器メーカーにとっての知財とは、主に独自に開発した特許やノウハウを指していた。それらの知財を自社で所有し、自社の製品や生産設備などに独占的に適用することで、多くの利益を享受できた。

 だが、そんな状況に変化が生じている。背景にあるのは、人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)の台頭だ。機器メーカーのビジネスモデルを揺るがしているこれらの技術が、知財にも新たな波をもたらそうとしている。

プラットフォームに知見が集積

 AI/IoTがなぜ知財の在り方を変えるのか。それは、AIやIoTシステムを1社で開発することはほとんど不可能だからである。GAFA(米Google(グーグル)、米Apple(アップル)、米Facebook(フェイスブック)、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム))と呼ばれる大手IT企業であっても、AI/IoTでは外部の企業や研究機関と手を結んでいる。ましてや、AI/IoTの技術者が不足気味の機器メーカーは、AI/IoTの専門企業の力が欠かせない。

 そのため、機器メーカーがAIやIoTシステムを開発しようとする場合、専門企業の提供する「プラットフォーム」を利用することが多くなる1)。必然的に、プラットフォームに知見やノウハウが集積する(図1)。知財の在り方が変わりつつあるのは、それが理由だ。

図1 プラットフォームに知財が集積
AIとIoTで「プラットフォーム」の意味や役割は異なるが、いずれもプラットフォームに知見やノウハウなどの知財が集積するという点が似ている。AIでは複数のフレームワークから学習済みモデル(アルゴリズムとパラメーターの組み合わせ)を生み出す開発基盤としての役割、IoTでは機器から集めたデータの分析結果をさまざまなアプリケーションで活用するサービス基盤としての役割を担う。それぞれのプラットフォームは単一ではなく、各社の提唱するプラットフォームが乱立している状況である。
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 AIとIoTでは、プラットフォームの意味や役割はやや異なる。そのうちAI、特に昨今のAIブームの中心にある深層学習(ディープラーニング)では、「Caffe」や「TensorFlow」といったオープンソースライセンスのフレームワークが複数存在しており、プラットフォームはそれらのフレームワークから学習済みモデル(アルゴリズムとパラメーターの組み合わせ)を作成し、その学習モデルを各種システムに実装するための開発基盤として機能する。一方、IoTのプラットフォームは、現場の機器から集めたデータを分析するとともに、その分析結果をさまざまなアプリケーションで活用するためのサービス基盤として機能する。

 しかし、いずれもプラットフォームに知見やノウハウなどの知財が集積するという点は同じだ。AI/IoTでは、このプラットフォームが開発やサービスの中心的な役割を担う構造であるが故に、プラットフォームを利用する機器メーカーだけが知財を所有し、独占するのが難しくなっている。むしろ、プラットフォームの提供企業(プラットフォーマー)も知財を利用できるようにしたり、機器メーカーとプラットフォーマーで知財を共有したりする方が、機器メーカーにとってもメリットが大きくなり得る。

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