電子設計技術に関する国際学会/展示会として、実に50年以上の実績を誇る「DAC(Design Automation Conference)」。56回目となる今回は、米Googleや米Microsoft、米Amazon.com/AWSといったインターネットサービス企業の存在感が高まった。学会ではソニーLSIデザインの新たなクロック設計技術など、展示会では台湾TSMCが披露した5nm FinFETのウエハーなどが注目を集めた。

 56回目を迎えた「56th Design Automation Conference(DAC 2019)」(2019年6月2~6日、米ラスベガス、図1注1)。その半世紀以上に及ぶ歴史の中でも今回、大きな変化があった。これまでの主役だったEDA(Electronic Design Automation)ツールのベンダーや半導体メーカーに代わり、米Googleや米Microsoft、米Amazon.com/AWSといったインターネットサービス企業が存在感を増していることである。

図1 Las Vegas Convention Centerで開催されたDAC 2019(56th DAC)
写真は展示会場の出入り口。(撮影:日経 xTECH 以下同)
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注1)WikipediaによればDACは1964年に始まり、おおむね年1回のペースで開催されていることから、半世紀以上続いていることになる。当初は機械や建築を含めて広く設計の効率化や自動化を扱っていたが、次第にエレクトロニクスや半導体の設計に限定されるようになった。また、Conferenceの名の通り、当初は純粋な学会だったが、設計の自動化や効率化を支援する製品、例えばEDAソフトウエア/ツールの展示も行われるようになり、この分野の技術と製品の総合的なイベントとなった。

 Google、AWS、Microsoftの3社は展示会場内にブースを構えた(図2)。以前のインターネットサービス企業は、EDAベンダーや大手EDAのユーザーに対して、クラウドの演算リソースやストレージリソースを提供するという、一般的なサービスをアピールしていた。それが最近は、EDAツールをクラウドで稼働させるという、より深いサービスを提供するようになってきた。このサービスならば、利用できるユーザーは格段に多く、しかもDACを訪れている可能性は高い。アピールしがいがあると判断したのだろう。

図2 Microsoft、Google、AWSが展示会場にブースを設置
この写真を撮影したのは最終日の午後。そのせいか閑散としていた。
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 インターネットサービス企業が存在感を高めているのは展示会だけではない。今回のDAC 2019にはMicrosoftのGalen C. Hunt氏(Distinguished Engineer and Managing Director)が基調講演に登場(図3)。独自設計した「Xbox One」向けICが非常にセキュアーであることなどをアピールしている。後半は、同社のIoT向けセキュリティーソリューション「Azure Sphere」を紹介した。

図3 基調講演に登壇したMicrosoftのGalen C. Hunt氏
講演タイトルは「Securing the billions of devices around us」。
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 また、「Design-On-Cloudシアター」というステージにはGoogleのC. Richard Ho氏(Hardware Engineer)が登壇した(図4)。半導体プロセスの微細化が難しくなる一方で(いわゆるMooreの法則の終焉)、インターネットの普及などにより計算の需要は伸びる一方である。この事態を打開するために、オープンなハードウエアの開発など、4つの手法を提案した。

図4 「Design-On-Cloudシアター」で講演するGoogleのC. Richard Ho氏
講演タイトルは「More Moore:Accelerating the Design of Accelerators」。(出所:スクリーンはGoogleのスライド)
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 インターネットサービス企業は、競合との差異化のために、多くの半導体、主に特定の処理を高速化するアクセラレーターを独自に開発している。実際、2019年3月に開催された欧州版DACである「DATE:Design, Automation and Test in Europe」では、AWSのDavid Pellerin氏(Head of Worldwide Business Development for Infotech/Semiconductor)が基調講演に登壇し、「Amazonのサービスは半導体が支えている」と述べて、独自開発したICを紹介した。

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 インターネットサービス企業が独自のIC設計に力を入れていることは、米Mentor, a Siemens BusinessのCEOであるWalden C. Rhines氏の講演からも伝わってきた(図5)。そこで紹介された統計情報によれば、ファウンドリーの売り上げに占めるファブレス半導体メーカーの比率がじわじわと下がる一方で、システムメーカーの比率が上がっている。システムメーカーの中では、インターネットサービス企業が大半を占めるとのことだった(図6)。

図5 「DAC Pavilion」で講演したMentorのWalden C. Rhines氏
講演タイトルは「Fundamental Shifts in the Electronic Ecosystem」。
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図6 ファウンドリーの売り上げに占める顧客の割合の推移
システムメーカーの中では、インターネットサービス企業が大半を占める。(出所:Mentorのスライド)
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