自動運転車の周囲を3次元的に把握するセンサーのLiDAR(Light Detection and Ranging)が、新たな進化を遂げている。検知能力の向上を狙い、2025年の実用化を目指す新技術の導入が目立つ。従来は、コスト低減に向けた機構部の改良「メカレス化」が主流だった。一方、メカレス化した既存品は、依然として数万円レベルと高価で、性能改善の余地は残るものの、2021年には市販車に載り始める。LiDARの最新動向を解説する。

 自動車の外界センシングに有効なLiDAR(Light Detection and Ranging)が、2021年にも市販車に載る。ドイツBMWは、2021年秋に出荷見込みの車両に、LiDARメーカーのイスラエルInnoviz Technologiesの製品を採用する。搭載するのは同社としての第2世代品で、2019年夏にサンプル出荷を始め、2020年の量産を予定している。

 同じくLiDARメーカーの米Quanergy Systemsは、同社製品が2021年以降の市販車に載せる計画を2018年時点で明かしている。パイオニアは、地域のシャトルバスなど特定用途向け自動車に同社のLiDARが2020年以降に搭載されるとする。

 これらLiDARを搭載した車両は、周辺にある物体との距離を計測して周囲の空間を3次元的にリアルタイムで認識。カメラ、レーダー、超音波センサーなどの情報と組み合わせて進行可能な領域を予測しつつ走行計画を立て自動運転を実現する。

土俵は「メカ対メカレス」の次へ

 3社のLiDARは、いずれも「メカレス型」である(図1)。米Google(現在は同社から独立し同社傘下にある米Waymo)が2012年ごろから自動運転実験車両のルーフに載せた円筒状の「メカ型」と比べて、大幅にコストダウンを図った。Googleが使ったメカ型は、米Velodyne Lidarの製品で、高価なものなら約7万米ドルした。車載用としては、あくまで実験向けとの位置付けだ。

図1 自動運転車向けLiDARが第2の進化
自動運転車の周辺センシングに使うLiDARの進化と採用の道のりを示した。「メカ型」は、2012年以降、Googleなどが始めた公道での自動運転の実験に使われ始めた。1台当たり1000万円近いLiDARの置き換えを目指す「第1世代メカレス型」の提案が2010年代後半に相次ぎ登場した。主にはレーザー光の走査手法を改良していた。一部は2020年代前半に市販車に載る。ここ2~3年に提案されたのは、LiDARの測定距離を200m以上に伸ばす上で本質的な課題となる波長や距離計測手法を改良する技術である。2020年代後半に市販車に搭載される見込みだ。(図と写真:右からInnovizの距離画像、Blackmoreのレーザー光源、パイオニアのMEMS走査のイメージ、Velodyneのメカ型製品)
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 一方、2021年に市販車に載るメカレス型は、近赤外レーザー光を走査するためのスキャン機構を可動部のない素子かMEMS(微小電子機械システム)で置き換えて、コストを抑えている。価格は量産時に1000米ドル前後の見通しである。Velodyneの実験用と全く同じ仕様ではないものの、価格を2桁近く安くしつつ自動車メーカーの要求仕様を満たす。こうした車載LiDARが、あと2年で市場に登場することになる。

 今後メカレス型は、コスト競争力と信頼性の高さからメカ型を駆逐していく可能性が高い。メカ型で名を馳せたVelodyneもメカレス型を開発済みだ。将来の世代交代への備えはできていると言える。

 ここに来て、メカ型との競争を勝ち抜きそうなメカレス型が、次に立つ土俵が見えてきた。性能競争だ。メカ型と競ったメカレス型を「第1世代」と呼ぶなら、メカレス型同士で競うのは「第2世代」である(図1)。第2世代メカレス型は、200mを超える遠方や太陽光などの雑音が多い環境での検知能力を高める新技術を盛り込む(図2)。

(a)AEyeのLiDARを搭載した実験車両
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(b)Blackmoreの開発品
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(c)Blickfeldの開発品
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(d)Innovizの製品写真
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(e)パイオニアの開発品
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図2 LiDARの新提案が続々、方式の模索はまだ続く
LiDARの新製品や新技術が相次いで登場している。新製品は、市販車への搭載を視野に入れるメカレス型の改良品である。(写真:(c)以外は各社)

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