「今はこれしか選択肢がない」。自動運転車の頭脳となるAI(人工知能)半導体に不満を抱く自動車メーカーが増えている。現状では性能の高さから米エヌビディア(NVIDIA)や米インテル(Intel)/イスラエル・モービルアイ(Mobileye)のプロセッサーが候補に挙がるが、安定供給を不安視する向きも少なくない。特性の異なる半導体を適材適所で組み合わせ、リスクを分散する取り組みが始まっている。

写真:トヨタ自動車、shutterstock
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 「高性能なGPU(Graphics Processing Unit)を使わないと、自動運転ソフトがまともに動かない」─。トヨタ自動車の自動運転子会社であるトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)の技術者は、トヨタがGPUベンダーの米NVIDIA(エヌビディア)と提携した理由をこう説明する。

 トヨタはこれまでレベル3以上の自動運転車に必要な半導体チップの性能を「120TOPS(Tera Operations Per Second)以上」と説明してきた。トヨタが採用を決めたNVIDIAの車載SoC(System on Chip)「Xavier」は30TOPS。要求の1/4の水準だが、現時点で入手可能な車載SoCとしては最も性能が高い(図1)。さらに自動運転の要となるAI(人工知能)技術は、NVIDIAのGPUを使ったサーバー環境で開発することが多い。このため、「同じGPUコアを搭載するXavierは、OTA(Over The Air)でソフトを更新する際に使いやすい」(TRI-AD)という。

図1 理想と現実にギャップ
自動運転に必要な半導体チップの性能は120TOPS以上といわれている。しかし、実際に入手できるチップは30TOPSしかない。消費電力も理想とかけ離れている。日経Automotive編集部が作成。
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 ただ、トヨタは車載SoCをNVIDIAに一本化したわけではない。Xavierは高価な上、消費電力も30Wと大きい。安定供給にも不安が残る。NVIDIAの本業はコンピューターグラフィックス(CG)市場である。車載分野は将来の成長市場として重視しているものの、経営環境が変われば、本業を優先する可能性が高い。

 このため、トヨタは2020年の実用化を目指す高速道路での自動運転技術「Highway Teammate」には、ルネサス エレクトロニクスの車載SoC「R-Car H3」を使う方針だ。ルネサスは車載分野で長年の実績があり、東日本大震災の経験から供給面での信頼性を高めている。チップの性能はXavierには及ばないものの、Highway Teammateなら対応できる。

 一方、トヨタは2020年代前半に、一般道での自動運転技術「Urban Teammate」の実用化を目指す。ここでは高度なAI技術が必要になることから、性能の高いXavierが必須になる。Highway Teammate対応の車両に、あらかじめXavierを搭載しておけば、OTAによってUrban Teammateに対応させることもできる。何らかの理由でXavierの供給が止まったとしても、Highway Teammateは実現できる。

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