電極を構成する金属箔(薄い層)に塗ったスラリーを既存品(左の断面写真)よりも約5倍厚くした新型(右)では、少ない層数(金属箔数)で済み、スラリーの密度を高められる(写真:24M)
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 京セラは、原理的に事故の恐れが少なく、容量密度の大幅な向上が期待できる新型リチウム(Li)イオン電池の量産を2020年にも始める(図1)。既存のLiイオン電池に対して、原材料費を4割ほど安く抑えられ、製造工程を1/3に簡素化できるという(表1)。安全性向上と高密度化を両立できるとして注目を集める全固体電池よりも技術的課題が少なく早期の量産化を可能にする。

図1 材料コストが安く高容量化が期待できる新型電池
電極を構成するスラリーは、バインダーを含まない。電解液は含んでおり粘性がある。京セラは、粘性のあるスラリーに着目して新型電池を「クレイ(粘土)型」電池と呼ぶ。基本技術を持つ24Mは「半固体(semi-solid)型」と呼んでいる。(写真:京セラ)
表1 既存電池に対する新型電池の構成部材削減量
(表:24Mのデータを基に本誌が作成)
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 同社は、大阪府大東市の大東事業所(以前は旧・三洋電機の工場)内に新型電池のパイロットラインを設置中で2019年中に完成させる。量産技術を検証した上で、2020年度中の生産開始を目指す。京セラが20%出資しているベンチャー企業の米24Mテクノロジーズ(24M Technologies)の電池技術を基にしており、同社の米国事業所には基本的な製造技術を確立するための試験ラインを両社で設置済みである。

 京セラは、住宅や工場などに置く太陽光発電システムと組み合わせる蓄電池システム向けに今回の電池を生産する。「卒FIT(固定価格買い取り制度)」によって固定価格での売電を終えて自家消費するユーザーに売り込む。新型電池の採用で「容量8kWhの価格が約35万円の住宅用定置型蓄電池の原価を現在の約20万円から約14万円に削減できると見込んでいる」(同社)。

材料と製造工程を大幅に削減

 今回の新型電池は、電極を集電体(一般には金属箔)とともに構成するスラリーの組成を一新している。既存電池のスラリーは、蓄電に寄与する(Liイオンを吸収・放出する)活物質の他に、これを金属箔に密着しやすくするためのバインダー(接着剤)や、塗布しやすくするための溶剤などを含む。

 新型はバインダーと溶剤を不要にした。既存の製造工程ではバインダーや溶剤で液状としたスラリーを使うために金属箔への塗布後に乾燥工程が必要な上、スラリーの体積が収縮することなどから厚塗りができなかった。新型ではバインダーを使わないことで乾燥工程を省けるとともに、スラリーを厚く塗れる。

 24Mによると、スラリー厚は既存電池の60µ~110µmに対して300µ~500µmと約5倍にできる(上の写真)。同じ量の活物質を内蔵するために使う金属箔の量を減らせる。原材料費の削減とエネルギー密度の向上が可能になる。この部分でのエネルギー密度は既存品の3~4倍になるという。

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