政府が旗を振り、官民一体で進めている「働き方改革」。従業者の高齢化が急速に進む建設産業では喫緊の課題だ。いかに若手の入職を促し、職場に定着させるか。日経コンストラクションは、若手にとって魅力的な職場を作るための実践手法をまとめた書籍「建設版 働き方改革実践マニュアル」を2019年9月24日に発行した。連載では、書籍の一部を紹介する。第1回は、現代の若者像を通して、若手に選ばれる職場環境を考察する。(日経コンストラクション)

 働き方改革の議論になると、「残業を減らす」「休日を増やす」などという単純な話に終始することが多い。もちろん、労働関連法の規制に準じた残業時間や休日数に配慮して、「働きやすい」職場を作るための努力を怠ってはいけない。

 しかし、建設産業では、雨が降ったり、風が強かったりすると実施できない作業が多い。台風や地震が襲来すれば、国土を守るために現場に駆け付けなければならない。予定通り残業を減らしたり、休日を増やしたりすることは容易ではない。

 半面、建設産業ほど「やりがい」の大きい仕事はない。建設した構造物は長期にわたって存在し、地図に掲載されるケースも多い。「建設業は地球の彫刻家」と呼ぶ人もいる。

 このような「働きやすさ」と「やりがい」の双方がある職場を「働きがい」のある職場という。働きやすさとやりがいを高め、働きがいのある職場を作ることこそが、建設産業の真の働き方改革といえる。

 建設企業の多くがそうした取り組みを進めれば、若者の入職が増え、業界が活気にあふれるようになるだろう。各社の働き方改革が業界の活性化につながるわけだ。

首位は「自らの成長が期待できる」

 リクルートキャリアが実施した調査によると、2019年に卒業する学生が建設会社を就職先として確定する決め手となった項目のトップは、「自らの成長が期待できる」の47.3%だった(図1)。

図1■ 就職先を確定する際に決め手になった項目
    性別 業種※
全体 男性 女性 IT・情報通信業 製造業 サービス 流通業 金融業 建設業
n 978 527 451 207 246 267 104 94 41
自らの成長が期待できる 47.1 49.0 44.8 48.6 38.3 50.0 53.5 51.1 47.3
裁量権のある仕事ができる 10.2 11.3 9.0 8.4 10.9 12.3 10.9 7.3 6.0
ゼミや研究等、学校で学んできたことが生かせる 16.1 18.0 13.8 20.6 19.5 15.9 5.6 8.2 20.8
課外活動(サークル、アルバイト)や学校以外で学んできたこと・経験を活かせる 9.4 8.3 10.7 6.4 9.3 14.0 12.7 2.4 6.6
フレックス制度、在宅勤務、テレワーク、育児休暇等、働き方に関する制度が充実している 15.0 11.3 19.4 24.7 14.4 9.1 13.1 13.4 15.7
福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している 37.8 32.8 43.6 34.7 40.0 33.1 43.8 41.5 46.7
希望する地域で働ける 37.0 28.9 46.4 40.3 36.5 31.8 41.1 45.6 24.7
教育・トレーニング環境や研修制度が充実している 16.0 12.9 19.7 22.8 13.8 14.6 16.2 13.8 10.0
年収が高い 18.4 23.0 13.0 16.4 20.1 17.4 15.1 23.0 29.3
副業ができる 1.1 1.6 0.5 2.5 0.2 0.6 1.3 2.0
会社・団体で働く人が自分に合っている 27.5 21.5 34.6 27.0 25.9 25.2 35.4 33.3 23.9
会社・団体の規模が大きい 14.3 14.8 13.7 10.4 15.9 12.7 13.9 16.5 32.9
会社・団体の規模が小さい 1.7 1.8 1.6 2.0 0.4 2.6 1.3 4.0
会社・団体の知名度がある 15.1 15.3 14.9 9.9 15.9 14.6 17.9 17.6 30.6
会社や業界の成長性がある 20.2 22.4 17.6 17.5 29.1 19.2 12.7 14.4 17.0
会社や業界の安定性がある 29.5 28.2 30.9 21.4 37.9 26.0 29.7 27.4 46.2
会社・団体の理念やビジョンが共感できる 22.2 21.0 23.7 20.0 28.4 22.3 20.8 17.3 8.6
※就職先の業種を抜粋したため、 6業種のnの合計は全体のnよりも少なくなっている(資料:リクルートキャリア)

 半数近くの学生が「自らの成長が期待できる」という項目を選んだ点を踏まえると、建設会社が魅力ある人材を採用するには、教育システムの充実が重要だと分かる。

 3番目に回答が多かった「会社や業界の安定性がある」(46.2%)という項目については、建設業を選んだ学生が他業種を選んだ学生よりも割合が大きい点が注目に値する。建設会社には、安定を求める人材が集まる傾向にあるといえる。

 ならば、入社した若者はどのような特徴を持っているのだろうか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングと日本生産性本部は、それぞれ18年度の新入社員を対象に意識調査を実施。いずれも建設業だけを対象にした調査ではないが、その結果からは今どきの若者像が浮かび上がる。

 まずは、新入社員が会社や職場に望む内容を見てみよう。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、「人間関係がよい」という項目が最も重視されている。人間関係に重きを置く考えが透けて見える。「地位が上がる」といった個人の昇格を重視する若者は少ない。周囲と協調して仕事に取り組むことをより大切にする姿勢がうかがえる(図2)。

図2■ 出世よりも人間関係が大切
(資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「2018年度新入社員意識調査アンケート結果」)
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 会社に望む項目として2番目に多かった「自分の能力の発揮・向上ができる」については、若者の意識が急速に低下している。05年度に8割近くあった回答が、18年度には55%を割り込むまでに至った。

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