毎日歩き回って現場をチェックする建設会社の監督。ドローンが現場を巡回するのが当たり前になれば、業務の一部を任せられそうだ。既に工程や安全の管理に使う事例が出始めた。現場発の技術革新は、災害時のドローン活用にもつながる。

 「これからの技術者不足に備えて、現場管理の手法をアップデートする必要がある」。大成建設土木技術部の黒木博技術担当部長がこう言って期待するのは、ドローンを使った現場の「4次元工程管理」だ。

 4次元工程管理とは、定期的に現場の施工状況を3次元モデル化し、工事の進捗などを時系列で可視化する手法を指す。出来形数量の計算や安全管理にも活用する(図1)。

図1■ ドローンを使って作成した3次元モデルとCIMモデルを組み合わせて工事進捗を「見える化」
CIMモデルと3次元モデルを重ねた(左)。右はCIMモデルを透過して現場状況と見比べた。岩の種類によってCIMモデルの色を変えている(資料:大成建設)
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 現場の3次元モデルは、ドローンによる空中写真測量で作った3次元点群データに、同時に記録した空撮写真を貼り合わせて生成する。

 大成建設は、CADソフトウエア大手のオートデスク、米イリノイ大学、米リコンストラクトと共同で実証を進めている。舞台は、国土交通省東北地方整備局が発注した成瀬ダムの原石山採取工事だ。大成建設などは、週に1回ドローンで現場を巡回して山全体を3次元モデル化している。

 最新の情報に更新された現場の3次元モデルと、工程とひも付けた3次元設計データ(CIMモデル)を重ね合わせれば、工事の進捗を確認できる。進捗が遅れている箇所や工種もすぐに分かる(図2)。

図2■ 現場の3次元モデルを毎週自動で更新して工事の進捗を管理する
約1年間の現場の変化を3次元モデルで可視化(上)。ドローンで作った3次元モデルは任意の場所を拡大できる他、工程管理に利用できる(下)(資料:大成建設)
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 従来は技術者が図面や数量、工程表などを見比べて、工種ごとに進捗を管理する必要があった。「現場の『見える化』は、工程の情報共有や施工計画の見直しに大いに役立つ」(大成建設の黒木技術担当部長)

 出来形数量の算出も活用の一例だ。現場の3次元モデルとCIMモデルとの差分から掘削土量を求められる。当日と前日の3次元モデルを比べて、その日に採取した土量を計算することも容易だ。

 オートデスクによると、米国の建築工事では大成建設などが導入したのと同じシステムにAI(人工知能)を併用。過去の工事進捗状況などを基に、将来の工程遅延のリスクを推測している。

データ処理はクラウド化で全自動

 ドローンの飛行から現場の3次元モデル作成までの一連の作業に人が出る幕はない。リコンストラクトなどが開発したクラウドシステムがほぼ全てを自動で処理する。

 初期設定を済ませれば、ドローンは決められた航路を自動で飛び、現場内を撮影して帰還。記録したデータをWiFiで転送してクラウドサーバーに保存し、3次元モデルに自動変換する。リコンストラクトによると、処理時間は写真100枚につき50分。夕方にドローンを飛ばせば、翌日の朝までに完成する。

 3次元の点群データに空撮写真を貼り合わせる処理をクラウドで自動化した技術は他にないという。従来、専任の作業者が高性能のパソコンで数時間かけて処理する必要があった。オートデスクの福地良彦アジア太平洋地域土木事業開発統括部長は、「点群データだけでは現場を理解しづらい。写真と一体化することで初めて見える化できる」と強調する。

 クラウドサーバー上の3次元モデルは、発注者の事務所や大成建設の本社からもチェックできる。「今後、3次元モデルを出来形数量の検査に使えるよう基準が整備されれば、発注者の業務も効率化できる」。大成建設土木技術部ダム技術室の新井博之課長はこうみている。成瀬ダムの採石場は、発注者の事務所から車で片道30分以上かかるという。

 大成建設などは今後、写真から岩の種類を判別できるAIの開発に着手する予定だ。あらかじめ岩の種別を属性情報として入力したCIMモデルとAI、3次元モデルを組み合わせれば、岩種別の出来形数量を自動で求められるようになる。

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