未来の道路はもはや単なる移動用の空間ではない。近い将来に起こり得る様々な社会状況の変化を見据え、道路の変革に挑む最先端の取り組みを見ていこう。

充電
EV時代は道から給電

 いかに短時間の充電で長距離を走行できるか──。普及率が伸び悩む電気自動車(EV)が直面する命題に対し、道路を走るだけで電力を蓄えられる「走行中給電」は1つの答えになるかもしれない(図1写真1)。

図1■ EVの充電専用レーンが登場する可能性も
オランダの建設会社とデザイナーのダーン・ルースガーデ氏が作成した走行中に給電できる道路のイメージ(資料:Daan Roosegaarde、Heijmans Infrastructure)
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写真1■ 走行中給電が可能な受電コイルを搭載したEVの開発も進む(写真:東京大学)
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 走行中給電とは、電力を非接触でEVに供給するワイヤレス給電を応用した技術だ。路面に埋め込んだ送電コイルに電流を流して磁界の振動を生み出し、車側のコイルに伝えて充電する。

 現行のEVは、充電スタンドからケーブルを介して車載の蓄電池に給電する方式が主流だ。1回の充電で走行できる距離は約200km程度と、ガソリン車には遠く及ばない。

 さらに、大型車のEV化を見据えれば、蓄電池の大型化が必須になる。大型の蓄電池を実用的な時間で給電するには大量の電力を一気に送らねばならず、安全面の課題が残る。

 東京大学大学院新領域創成科学研究科の堀洋一教授は、「走行中給電は、EVの利便性を飛躍的に向上できる」と期待をかける。

 電車が架線からエネルギーを受け取って走り続けるのと同様、車が道路から電力をもらいながら走れば、余計なエネルギーを電池に蓄えて持ち運ぶ必要はない。加えて、高速道路や市街地の主要な交差点などに給電設備を敷設しておけば、充電待ちの時間やエネルギー切れの不安からドライバーを解放できる。

アスファルト舗装に埋め込む

 では、どのようにして道路に送電コイルを埋め込むのか。具体的な検討を東亜道路工業が進めている。2019年3月に同社技術研究所の構内で高速道路への適用を想定した非接触給電舗装を試験施工した(図2)。

図2■ コイルを型枠で保護して水没や位置ずれを防ぐ
非接触給電舗装を試験施工する様子。タイヤがあまり上を通らず、わだち掘れが生じにくいレーン中央にコイルを埋め込んだ(資料:東亜道路工業)
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 送電コイルは、押出法ポリスチレンフォームで製作した型枠に収納し、アスファルト舗装の基層に埋め込んだ。型枠はコイルを保護すると同時に、設置時の位置ずれを防止する。舗装の修繕工事では深さ5cmほど切削してオーバーレイするのが一般的であることを踏まえ、型枠の埋設深さを8cmに設定した。アスファルトのたわみと防水を考慮して、舗装の層間には専用のシートを敷いた。

 東亜道路工業技術本部の藤永弥技術部長は、「普通のアスファルト舗装よりも性能は若干落ちる。それでも、実用化が見えてきた」と前を向く。耐久性向上が今後の課題だ。

 ワイヤレス給電技術の開発では、米ワイトリシティをはじめとする海外企業数社が頭角を現し、自動車会社と実用化の検討を進めている。開発競争は今後、激しさを増しそうだ。

堀 洋一氏
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 教授
EVの制御やワイヤレス電力伝送システム、急速充放電が可能な電気2重層コンデンサーの応用といった研究を手掛ける
(写真:日経コンストラクション)

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