油圧ショベルの作業は複雑だ。掘削作業だけでもアームやブームなど制御すべき項目は多い。走行機能も加えると難度はさらに増す。

大林組など
掘削の自律運転を19年中に

 大林組とNEC、大裕(大阪府寝屋川市)は共同で、油圧ショベルの自律運転システムを開発している(図1)。3社が開発するのは、土砂置き場から土を掘削してダンプトラックに積み込む作業の自動化だ。作業領域を見下ろせるように、高所作業車にステレオカメラや3Dレーザースキャナーを設置して、自律運転に必要な現場の状況を把握する(図2)。

図1■ 無人の油圧ショベルが自動で動く
大林組東日本ロボティクスセンターにおいて、2019年7月18日に油圧ショベルの自律運転のデモンストレーションを行っている様子(写真:日経 xTECH)
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図2■ 高所から現場を見る
油圧ショベルを自律運転させるために必要な周囲の状況は、高所作業車に設置した3Dスキャナーやカメラなどの映像を利用して確かめる(資料:大林組)
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 3Dレーザースキャナーでは、土砂置き場の土砂の状況を確認する。積み込める土砂の量が最大となるポイントを判別し、そこを目がけて油圧ショベルのバケットを動かして掘る。バケットに土を入れた後に油圧ショベルの車体を旋回し、有人運転するダンプトラックの荷台上部までバケットを運ぶ。

 ステレオカメラはダンプトラックの上部などを映像で捉える。荷台の土砂の状況を確認しながら積み込みを進められるようにする。所定量を積んだ後は、油圧ショベルの警笛を鳴らしてダンプトラックの運転手に作業完了を伝える。

 カメラやレーザースキャナーのほかに、自律運転システムを支える大きな技術は3つある。1つは油圧ショベルに取り付けたセンサーだ。油圧ショベルのバケット、アーム、ブーム、旋回する車体部に合わせて4つの傾斜計、旋回する車体部にはさらにジャイロを設置して、油圧ショベルの動きを把握する。

熟練の技をデータ化し、AIで学習

 2つ目の技術は、油圧ショベルを操る熟練オペレーターの操作データを活用し、運転プログラムに生かした点だ。油圧ショベルの操作には、相応の技能が要る。「オペレーターは土砂の硬さなどに合わせて、掘削時のバケット歯先の入射角度を変える。土砂を効率良くすくうためのバケットやアームなどの動かし方も、オペレーターが感覚的に持つスキルだ」(大林組ロボティクス生産本部の森直樹・自動技術推進課長)

 実際の現場数やデータ量などは明らかにしていないものの、大林組は複数の現場で熟練オペレーターの運転情報を集めた。それを教師データとして活用するだけでなく、シミュレーションも取り入れたデータを生成。AIによる機械学習などを経て、精度の高い操作を再現した。

 もう1つは、NECが持つ適応予測制御技術の活用だ。今回の開発で用いた制御技術は、市場に普及している複数メーカーの多様な機種に対応できる。運転席に大林組と大裕が共同開発した遠隔操作用の装置を載せれば、レバーなどを信号に基づいて操れるからだ。最新の電子制御型の油圧ショベルを採用しなくても使える技術にして、汎用性を高めた。

 従来型の油圧ショベルでは、レバーなどの操作と実際に機械が動くまでの応答に遅延が生じやすい。開発を担当したNEC中央研究所システムプラットフォーム研究所の吉田裕志主任研究員は、次のように話す。

 「従来型の油圧システムでは数百ミリ秒程度の遅延が発生し、これは通信などで生じる遅れよりも支配的だ。今回のシステムでは、こうした遅れを予測して制御できるようにした」。機種の違いによる応答遅延などの“癖”は、最初にキャリブレーションを行えば調整できるという。

 大林組では開発した技術を2019年12月に、土木工事現場へ適用する目標を掲げる。様々な機種にも使えるという汎用性の高さを武器に、開発した技術の外販も見据えている。

 課題も残る。例えば、現状の油圧ショベルの動きは、熟練のオペレーターの操作に比べるとまだ緩慢だ。現場適用までにさらなる高速化を図る。加えて、現段階では油圧ショベルに自律運転による走行機能を与えていない。汎用性を高めるには、これらの開発も必要となる。

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