着工時に不確定要素が多い補修工事は、施工者が敬遠しがちだ。そこで、発注方式を工夫して施工者のリスクを低下させる試みが始まっている。施工者が設計段階で関与するECI方式だ。

 全国で初めて、補修でECI方式(技術提案・交渉方式)という新しい仕組みを取り入れたのが、金沢市の中心部を通る国道157号の犀川大橋だ(写真12)。

写真1■ 橋長62m、鋼製曲弦ワーレントラスの犀川大橋。補修前に撮影(写真:日経コンストラクション)
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写真2■ 側面から見た犀川大橋。桁下を通る遊歩道は工事中も供用する必要があった(写真:日経コンストラクション)
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 ECI方式は施工者となる予定の会社が設計段階から技術協力者として関与し、現地調査の結果や施工者としてのノウハウなどを設計に反映させる発注方式だ(図1写真3)。発注前に最適な仕様を定めにくい工事に適用すれば、設計段階の技術協力を通じて仕様を固めやすくなる。

図1■ ECI方式では施工者が設計に助言できる
国土交通省、田原本町、オリエンタルコンサルタンツの資料を基に日経コンストラクションが作成
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写真3■ 設計段階で垂直材の張力を測定する川田工業の技術者(写真:国土交通省)
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 犀川大橋の補修では、設計を大日本コンサルタント、設計段階の技術協力と施工を川田工業がそれぞれ担当した。施工期間は2017年11月~18年7月で、工事費は約1億4100万円だった。

 インフラの補修では、設計の前提となる既存部材の劣化状況が施工者の詳細な現地調査で初めて分かる例が多い。施工者のノウハウを生かすという点では、ECI方式に向いている領域だ。犀川大橋の架設は1924年と古い。川田工業で現場代理人を務めた杉本浩士氏は、「現代のトラス橋とは全く異なる構造だった。そもそも使われている部材や材質も、現地調査に入るまでよく分からなかった」と振り返る。

 補修工事は、設計変更による手戻りのリスクが高いため、施工者が入札への参加を敬遠しがちだ。施工者が設計段階で関与するECI方式は施工時の手戻りの減少が見込まれるので、入札不調を減らす対策になると期待されている。

 犀川大橋は16年度の定期点検で、健全度IIIと判定された。早期に補修などが必要な段階だ。橋桁を構成する鋼材の一部が腐食し、床版がひび割れていたほか、橋桁と橋台の間の伸縮装置も損傷していた。管理する金沢河川国道事務所は、これらの箇所を補修することにした。

 同橋は国の登録有形文化財のため、補修で可能な限り外観に影響を与えない配慮が必要だった。「対象部位には溶接で施工された箇所がないので、補修でも溶接はできない制約があった」(川田工業の杉本氏)。

 金沢河川国道事務所は犀川大橋の補修で、設計に対する技術協力業務を手掛ける施工者を、16年度後半に公募型プロポーザルで選定した。「技術協力業務の実施」「損傷状況に関する所見および追加調査などの実施」「伸縮装置の補修において有効と思われる工法など」という3つの観点で技術提案を募集した。

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