せっかく盛り上がり始めたインフラツーリズム。旅行会社の企画担当者や旅行の研究者に、一時のはやりで終わらせずに長続きさせるためのアドバイスをもらった。より多くの人にツアーを知ってもらうには、業界外との関わりを深め、観光客の需要を考えることがポイントになる。

 「インフラの新しい見どころを発見するだけでは、インフラツーリズムの長期的な事業としての継続は見込めない」。跡見学園女子大学の篠原靖准教授はこう指摘する。内閣府が認定する地域活性化伝道師である篠原准教授は、インフラを地域の観光資源として活用し、事業を継続するために必要な視点を5つ挙げる(図1)。

  1. 資源発掘の視点 インフラを観光に生かすための注目ポイントは何か
    → 景観の美しさ、技術力の高さ、地域との関わり
  2. 顧客価値の視点 ①のポイントは旅行客にとってどんな価値があるか
    → ここでしかできない体験、新しい情報の入手
  3. 資源編集の視点 顧客価値を創出するために、インフラを何と組み合わせてどう見せるか
    → 近隣のインフラと組み合わせて楽しく見せる工夫
  4. 人材育成の視点 事業の拡大のために必要な人材や、その育成方法は何か
    → 旅行事業に詳しい人材や現地ガイドの育成
  5. 事業モデル化の視点 ビジネスとして継続的に発展させるための方策はあるか
    → DMOの活用、旅行会社との連携
図1■ 「観光資源化したい」だけでは長期的な事業にできない
インフラを観光資源として活用し、事業を継続するために必要な5つの視点とその例。篠原靖・跡見学園女子大学准教授の資料を基に日経コンストラクションが作成

 どれも重要な視点だが、インフラを観光に生かすポイントを見つける「資源発掘の視点」と旅行客から見た価値である「顧客価値の視点」の2つは、そもそもインフラツーリズムを導入するために欠かせない視点だ。残る「資源編集の視点」「人材育成の視点」「事業モデル化の視点」がインフラツーリズムを長続きさせるうえで、重要な鍵を握る。

インフラ特化型も価値になる

 観光資源の組み合わせ方や見せ方を考えるのが、「資源編集の視点」だ。多くのインフラは、他の観光地と組み合わせることで、観光客の満足度を高められる。ただし気を付けたいのが、“詰め合わせ過ぎ”だ。インフラ自体に十分な魅力があるにもかかわらず、それだけでは集客力が足りないかもしれないと弱気になって、他の観光要素を盛り込んでしまう場合がある。

 「色々な要素を組み込むと、ツアーの目的や見どころがぶれて、観光商品として選ばれにくくなる。インフラの面白ささえも伝えきれなくなってしまう」と、朝日旅行営業部の高坂健彦営業担当部長は指摘する。

万人受けより、とがったツアーこそ魅力的

高坂 健彦 営業担当部長
朝日旅行 営業部
高坂 健彦 営業担当部長 (写真:日経コンストラクション)

 お薦めインフラ 

  • 大阪市営渡し舟8カ所(大阪市)

 高坂部長が2018年に企画したツアーは、インフラに特化した観光商品でも顧客に受け入れられることを示す好例だ。それは、トンネル探究家の花田欣也氏が案内する「トンネル歩き」のツアー。山奥の人通りがほとんどないトンネルに特化したユニークさが話題となり、キャンセル待ちが出るほどの人気を博した。

 こういったツアーに注目が集まるのは、消費者の旅の目的が今までとは変質しているからだ。商品やサービスの機能に価値を求める「モノ消費」から、所有するだけでは得られない体験を求める「コト消費」へと消費者のニーズが転換。最近は体験したい「コト」の質や専門性が一層深まっている。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンストラクション」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら