海外で3Dプリンティング技術を活用した実構造物の建設が進むなか、日本国内の動きはまだ鈍い。法規制をはじめとする壁が立ちはだかるからだ。それでも、将来を見越して建設用の3Dプリンターの研究開発を進めているプレーヤーは存在する。国内の動きを追った。

大林組
試験施工でミニ・アーチ橋を製作

 大林組は、セメント系材料用の3Dプリンター技術を開発。このプリンターで幅50cm、奥行き25cm、高さ50cmの円弧型ブロック部材を製作し、これを合計6つ組み上げて、2017年にアーチ橋を試作した(写真1)。アーチ橋を選んだのは、セメント系材料が弱点とする引張力の負担を考慮せずに済むからだ。

写真1■ 大林組技術研究所のビオトープに設置されたモルタルのアーチ橋。3Dプリンターで打ち出して製作した。長さ約1.8m、幅約1m、高さ約50cm。圧縮強度は材齢28日で60.6N/mm2、曲げ強度は同3.6N/mm2。上面に見える橋軸方向の筋は、モルタルを積層する際にできた積層痕だ(写真:奥野 慶四郎)
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 開発したプリンターでは、安川電機製のロボットアームを用いた。汎用性の高いロボットアームを使えば、3Dプリンティング以外の作業にも転用しやすくなる。

 技術の原理は、熱可塑性樹脂を押し出して積層・造形する3Dプリンターと変わらない。造形物の3次元データを積層ピッチごとの断面にスライスし、各断面データを下から1層ずつ積み上げた。冒頭のブロック部材1個は、1層を約20秒、約15分で完成させている(写真2)。

写真2■ 3Dプリンターによるブロック部材の積層造形。一筆書きで層厚10mmの部材断面を下層から上層に向かってプリントしていく。1層のプリントに要する時間は約20秒、合計50層を15分程度で打ち出す(写真:大林組)
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 「当初は材料の硬化速度が遅く、すぐに崩れて10cmも積層できなかった。逆に、速過ぎると材料がノズル内で固まり、閉塞した」。大林組技術本部技術研究所生産技術研究部の金子智弥主席技師は、開発着手当時の状況をこう打ち明ける。

 こうした課題に、同社は材料設計の最適化と吐出機構の調整で対応した。材料設計では、化学メーカーのデンカと組んだ。両社は、圧送時の流動性と吐出後の形状保持性を両立させた性質を持つ材料として、道路上面の増し厚工事などで利用されている急硬コンクリートに着目。これに似た性質のモルタル材料を開発した。開発した材料の圧縮強度は、材齢28日で60.6N/mm2だった。

 一方、吐出機構は吐出する材料の量や幅、厚さなどが不均一にならないように、吐出速度やノズルの移動速度が一定になるように調整した。この他、ノズルの移動経路は「一筆書き」のルートとした。吐出した材料同士が交差すると厚みが変わり、出来形の精度が低下するからだ。

 大手建設会社のなかでも、先んじて3Dプリンターで構造物を造った同社では、現在も3Dプリンティングの研究を続けている。同社が建設用3Dプリンターで目指す有力な技術の1つは、バイオミメティクスなど形態は最適化されていても、型枠製作が困難な構造との融合だ。

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