プレキャスト・コンクリート(PCa)の利用ニーズが高まる一方で、導入を妨げてきた3つの壁がある。「煩雑な継ぎ手」、「高いコスト」、「曖昧な設計」だ。PCaの普及に向けて、これらの壁を技術基準や制度の整備で打ち破ろうとする動きが出てきた。

継ぎ手
部材同士の連結を簡単に
芋継ぎ認めたガイドライン

 現場打ちとPCaの構造の決定的な違いの1つが、継ぎ手の有無だ。PCaは重さや大きさに輸送の制約があるので、構造物が大型化すれば、必然的に部材同士の接合部が生じる。

 PCa部材の連結では、プレストレスト・コンクリート(PC)鋼材の緊張による一体化と並んで、鋼製スリーブの両側から鉄筋を差し込んで一体化する機械式継ぎ手が使われる。後者は緊張作業が不要なので、施工が容易だ。

 しかし、従来はPCaに有利な継ぎ手方法が、技術基準などに示されていなかった。そこで、道路プレキャストコンクリート製品技術協会の道路プレキャストコンクリート工技術委員会(委員長:宮川豊章・京都大学特任教授)は2019年1月、機械式継ぎ手の設計施工ガイドラインを発行した。

 作成に携わった土木研究所先端材料資源研究センター材料資源研究グループの古賀裕久上席研究員は、次のように話す。「プレキャストの設計は現場打ちの基準を準用することが多い。ところが、現場打ちでは当たり前の考え方がプレキャストにとっては障害になる場合がある」

「千鳥」が常識だった鉄筋継ぎ手

 その端的な例が、機械式継ぎ手を同じ断面に集める「芋継ぎ」だ。

 芋継ぎでは継ぎ手同士の間隔が密になる。コンクリートの充填や締め固めが不足する恐れがある。現場打ちでは鉄筋の継ぎ手方法として認められていない。隣り合う継ぎ手を鉄筋方向に数十センチメートルずつずらし、千鳥に配するのが常識だった。

 しかし、PCaの継ぎ手では必ずしも守られてこなかった。全国コンクリート製品協会の星田典行技術委員長は、「発注者の承諾の下、個々の技術者の判断で芋継ぎを採用することがあった」と振り返る。PCaの継ぎ手を千鳥に配すると、接続部の鉄筋が大きく飛び出た分だけ部材を小さく造らなければならないからだ。鉄筋をつないだ後に現場打ちするコンクリート量も増えてしまう。

 標準化されていない構造形式の採用は、発注者にとってハードルが高い。継ぎ手構造の敬遠が、PCaの敬遠にもつながっていた。

継ぎ手の間隔を鉄筋径の1.5倍に

 そこで、土木研究所と道路プレキャストコンクリート製品技術協会は共同で、機械式継ぎ手で芋継ぎしたPCa梁の曲げ試験を実施した。スリーブで“補強”された継ぎ手が密集すると剛性が高くなるので、接合部にひび割れは発生しない。逆に、接合部の周囲にひび割れが集中することを確認した(図1)。

図1■ 機械式継ぎ手が1断面に集中するとひび割れが分散しづらくなる
(写真:道路プレキャストコンクリート製品技術協会)
[画像のクリックで拡大表示]
(写真:土木研究所)
[画像のクリックで拡大表示]
(資料:道路プレキャストコンクリート工技術委員会)
[画像のクリックで拡大表示]
芋継ぎしたPCa梁の曲げ試験

 継ぎ手を過度に密集させなければ小さなひび割れが分散して発生するので問題にならない。ガイドラインでは、継ぎ手同士の間隔を鉄筋の直径の1.5倍以上離して配置することを条件に、芋継ぎを認めた。

 ただし、機械式継ぎ手の使用を認めるのは構造物の断面部の連結だけで、縦断方向の接続はガイドラインの対象にしなかった。「プレキャスト構造物の不同沈下や疲労などの知見がまだないため、用途を限定した」と古賀上席研究員は話す。

この先は有料会員の登録が必要です。「日経コンストラクション」定期購読者もログインしてお読みいただけます。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら